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*** それから慌ただしく毎日が過ぎ、余命宣告された日から数週間後には入学式を無事に終えて学校に通い始めていた。 都内某所にある県立佐倉高校。生徒数およそ800人。 規模も学力もまぁ珍しくはない普通の共学校だ。ただし進学クラスが各学年に2クラスあり、そこに通う人たちはそれなりに勉強が出来る。 ついでに僕のクラスは1年8組。自慢じゃないけど進学クラスである。中学時代、入院する度に暇を持て余していた僕は病室で勉強していたからそのお陰だと思う。 最初の数日の内はやっぱり、進学出来る可能性なんてほぼないのにこのクラスでいいのかと考えたりもしたけど、個性豊かなクラスメイトのおかげでそんな不安も吹っ切ることが出来た。 休み時間毎にパンばっかり食べてるパン好きとか、美人だけど実は怒ると超怖いマドンナとか、猫LOVE!の動物博士とか、本当に様々だ。 最近話すようになった隣の席の佐野 忍(さの しのぶ)も、ヒマさえあれば机に突っ伏して寝ている睡眠バカで、今日も相変わらず眠そうにしている。 そんな彼を目覚めさせたのが昼休みを告げる予鈴の音。4限が終わるとむくりと静かに覚醒するのだ。 ざわざわと騒がしくなった教室の中で忍くんが背伸びをする。あらあら横顔がイケメンですこと。 「月島、学食行かねぇ?」 そんな忍くんにいきなり声をかけられた僕は顔を上げた。 「僕裏庭に行こうと思ってるんだけど」 「裏庭ぁ?ここの棟からだと遠いだろうが」 「そんなこと言ってると太っちゃうぞ」 わざとらしくニッコリとすれば、うわキモっ、と苦い顔をする忍くん。ひどいよ。 『さっさと行って来い』とでも言うようにヒラヒラと手を振られ、僕は鞄の中からお弁当を取り出すとわざとらしく忍くんに悪態をついて教室を出た。

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