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第14話

「あの日、わたくしは周期に入って最初の日でした。凌太郎様とは、ほとんど肌を重ねておりません。あの周期の時、清二郎様には終わりの日が来るまで、余すところなく可愛がっていただきました。そして、子ができた・・・・・・」  最後の夜、薫の腹は子を宿しているかのように、清二郎の欲望で膨らんでいた。  いまの薫は、清二郎にその時の痴態を思い起こさせるようで、まだ日が高い自分だというのに、情欲が擡げてくるのであった。 「この子は兄の子です。皆が幸せでいるためには、それが一番いいのです。それに、兄亡き後、実質私が、この子の父親のようなものです。まあ、もう私のことはいいでしょう」  清二郎の手が薫の頬に触れる。  薫は目を細め、その手にすり寄る。清二郎の手首に、白い指が重なった。  それが二人の合図だった。唇が重なり、肉厚な舌が絡み合う。 「ん、あまり激しいのは、駄目だとお医者様が・・・・・・」 「できるだけ、配慮するつもりですが、今の貴方が、あの日の貴方に重なって、もう我慢ができません」    滾った欲望を薫の腹に押し付けた。まるでその奥にいる子に本当の父親が誰か、分からせるような動きに、薫は感じ入った吐息を漏らした。   「今であれば、まだ、まぐわいも問題はないと言われていますが、どうか、ご容赦を。この子が、何か感じるということはないでしょうけれど」 「最初で最後の親子交流といきましょうか」 「まあ、品のないこと」  清二郎は薫を一糸纏わぬ姿に変えた。咎めるような視線を送りながら、薫の唇は弧を描いていた。  障子にうっすらと浮かんだ二つの影はゆっくりと重なり、あとは水音だけが聞こえてくるばかりであった。

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