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タブー (1)

胸騒ぎがしていたんだ。 今日は朝からなにかがおかしかった。 エプロン姿の母さんと、皺ひとつないワイシャツに身を包んだ父さん。 高校の制服を着た俺と、眠そうに目を擦りながら学ランのボタンを留める弟の世那(せな)。 四人揃ってテーブルに着いて、手を合わせていただきますの挨拶。 両手で新聞を広げる父さんに母さんが文句を言い、にんじんだけこっそり皿の端に避ける世那には俺が小言を言う。 そんな、いつもと変わらない朝の風景。 それなのに、なぜだかとても息苦しかった。 たくさんの笑顔が溢れているのに、まるで紙の上に描かれた偽物のようなーー…

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