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第11話 side緋月

 朧が眠り込んでいるのを確認し、部屋を出て電話を掛けた。  相手はすぐに電話に出る。 「あ、お疲れ様。君のおかげで、朧はボクに落ちたよ。協力してくれてありがとう、誠司」 『いいんすよ。それにしても朧、とんだ変態野郎ですね。縛ってって言われた時はどうしようかと思っちゃいましたよ』 「朧はそうしないと興奮しないからね。今日はガムテープで口を塞いで手足を固定してM字にしてあげたら、鼻水垂らして喜んでいたよ」 『ははっ。俺には到底理解出来ない性癖です』  電話を切って部屋に入り、朧の頭を撫でる。  可愛い朧。  高校のオープンキャンパスに訪れていた君を見て、何としてでも手に入れたいと思ったんだ。  あの日からボクは、朧のストーカーになった。  片親だと分かった時点で、チャンスだと思った。  ボクの父と再婚させればいい。  朧の母、玲湖の事を調べたら意外な事が分かった。  過去に何度も万引きで捕まっていて、それを理由に離婚をしていたのだ。  万引き依存性。  離婚後も治ることはなかったのだろう。ボクが見ていた限り三度は万引きをしていた。  店を出たところで声をかけると、玲湖は泣きながらボクに縋った。何でもするから、どうか見逃して欲しいと。  ボクの父は金は稼ぐがヤリチンのクズだ。  部下の既婚女性とホテルから出てきた瞬間を写真に撮ったり、女子高生のフリをしたボクとの猥褻なメールのやり取りをスクショした画像をネタに脅すと、玲湖と同じように泣きつかれ「会社や取り引き先には黙っていてくれ」と土下座をされた。  二人を引き合わせたのはボクだ。  まさかこんなにも早く再婚してくれるとは思わなかったが、計画通り。  本当に愛し合って結婚したかどうかは定かではないが、地方への出張と言って近くのビジネスホテルで寝泊まりしている父を見れば答えは自ずと出ているのだろう。  玲湖も父もボクの言いなりだ。  特に玲湖は扱いやすい。しょっちゅう出かけているが、あれはボクが出ていけと指示しているからだ。  いつもどこで時間を潰してるんだろうなあ。  そして誠司。  朧のクラスメイトで、見た目が強そうな奴だったら誰でも良かった。  たった百万円。それだけで誠司は朧の親友役を買って出てくれた。  あの日、朧に嵌めた手錠をキツめにしてわざと傷を作らせ、誠司に指摘させたのはもちろん、朧に告白するように指示したのもボク。全て台本通りだ。  でも“朧は命に変えても俺が守る”は誠司のアドリブだ。  予定にはなかった台詞を言われ、こみ上げてくる笑いを堪えるのに必死だった。バトル漫画の読み過ぎだ。  最後に朧。  住み始めてすぐに、夕飯時に出した朧のお茶に父からこっそり拝借した睡眠導入剤を入れ、ぐっすりと眠ってもらっている間に朧のスマホの指紋認証を解除させ、データを全て自分のPCに移した。  検索エンジンの履歴、無料動画アプリの閲覧履歴や保存済みの写真。  それらを見たら、SMプレイが大好きでレイプ願望があるのだとすぐに分かった。  案の定、キツく縛り自由を奪ってやれば、朧はゾクゾクと体を震わせて蕩けきった顔をしていた。  ふと思い出し、イヤホンをしてスマホで動画を再生する。  最近繰り返し見ているお気に入りの動画だ。 『――はぁっ!あっ!やっ!緋月ぃ!』  ボクの名前を呼びながら後孔にアナルビーズを抜き差しする朧。  この部屋には小型の監視カメラが仕掛けてある。  元はセックスの記録用だったが、ボクの修学旅行中に朧がここで自慰をするシーンが映ってからは楽しみが倍になった。  バイトと嘘を言って外に出る日は、大抵ここでしてくれる。  漫喫の個室でそれをリアルタイムで眺めるのが至福の時なんだ。この日は玲湖に出ていかせたから思い切り喘いでいて好きだ。朧の可愛い自慰動画ベスト3に入る。  ねぇ、朧。ずっと一緒だよ、何があっても。  ボクと共に、永遠に狂っていようね。  【終】

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