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第11話

 喚く声が耳に障る。不愉快だ。 君の声は記憶のとおり、甘くて柔らかくて深い声だった。君だと直感したから囁いた。後悔はない。 感情的になったアルファのフェロモンは際限を知らないように溢れて空気を薄くする。重力に押し潰されるような感覚と、今まで感じたことがない冷たいフェロモン。 「なんで、お前は俺のモノにならない」 悲痛な叫びは心に響かない。 「なんで、なんで、なんでっ!!!ここまで愛しているのに!」 狂ったように叫ぶアルファに、意識も呼吸も絶えそうになりながら笑ってしまう。 「……、……ふ、ふふ……あいしている?誰を?まさか僕を?ありえない。ありえないな。だって、っあんたがあいしているのは、あんただけだ」 ゴポリと血を吐き出して呼吸が浅くなる。あぁ、赤い。やっぱり約束は違えないんだな、と笑ってしまう。 「ぁぁあああああぁぁぁぁぁああああ」 壊れたように叫ぶアルファのフェロモンに押し潰された。

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