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第12話
いつものように、漂うように、街を歩いているとモーゼの十戒のように人混みが裂ける。裂けて、自分の前で落ち着いた。
「みつけた……」
とても強いアルファだと思った。視線だけで人が殺せるくらい強い。そんなアルファがフェロモンを暴走させているのだと身体で理解した。
「っ、なんですか」
アルファの知り合いなんていない。怒るというより、狂気に溺れた男の重圧に呼吸が苦しくなり膝頭笑う。
「お前がいたからあいつは俺を見なかった。お前よりも優れた俺を見なかった」
言葉が声が音のひとつひとつが礫のように降りかかる。呼吸もままならない状態で思考を転らせる。
「俺はあいしていたんだ。あいつを、あいしていたのにっ」
何度も何度も同じ言葉を繰り返す、繰り返して涙の枯れた目が、悲壮感と従服感をもった表情が全てを物語る。
あぁ、烏は死んだのか。
やはり、約束は違えない。
警察や周りで動けなくなった人たちがなにかを言っている。あなたのいない世界に興味も未練もない。
あの日のように時間を間違えそうな空に別れを告げた。
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