9 / 37

2-1

「痛…てて…」  気づけば、朝だった。  腕も、足も、全身が軋むように痛い。 「なんでこんなに…あ…!」  布団中から起き上がると、走馬灯のように、何が起こったのかが脳裏を巡った。  加瀬に、レイプされたんだった。    体中を見直す。いつもの様な、下肢にはスウェット、上半身は裸のままだが、乳首も、ペニスも、肝心な後孔も、腫れたように痛んだ。 「いて…ッ…くそ…ッ」  急いで、姿見のミラーまで駆け寄る。一歩一歩足を出せば全身に痛みが奔った。  鏡に映った体には、くっきりと首に絞められたような跡が残っていた。  記憶が蘇る。  ベルトと、アクセサリーの首輪で締められた跡だ。赤く残った跡は、二、三日残りそうだった。  そっと、スウェットの中を覗く。  ペニスには、くっきりと赤くブレスレットの跡が残っていた。 「な…!あー…くそ…」  記憶は芋づる式に蘇るものなのか、加瀬を相手に晒した痴態が、次々に頭で再生される。  なぜ、あんなに簡単に翻弄されたのだろうか。  加瀬の声。  加瀬の指。  加瀬の愛撫。  加瀬の。 「あああ!俺のばか!マゾ!淫乱ビッチ!」  きっと、加瀬は自分の隙を狙ってきたのだ。貴遠のいない時間をわざわざ調べ上げ、住所を調べ、盗撮までして。 「ん?盗撮?」  そういえば、脅迫に使われた写真はどうしたのだろう。  ばら撒かれた場所を探しても、何処にもない。 「あいつ…!」  証拠の写真を、取り返していない。  タンクトップを被り、ジャケットを着ると、跡隠しに首に首輪のベルトを巻く。   ベルトが触れると、ヒリヒリと痛んだ。  気を抜けば、加瀬の声が耳元に触れそうで、愁は頭を振った。 「バカ、淫乱」  それどころではない。一刻も早く、写真を取り返さねば。  スニーカーを潰すように履くと、愁は玄関を飛び出した。

ともだちにシェアしよう!