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ロビーを抜け、加瀬は背後で自動ドアが閉まるのを待った。
マンション前には、白のベンツが横付けされ、一人のスーツ姿の男が立っていた。
加瀬は、まるで待ち合わせをしていたかのように男に向かってニヤニヤと笑うと、高い声を上げた。
「へェ、待っててくれたんだ?」
男は整った顔を、その眉をわずかに寄せると、加瀬を見た。
「シュウなら、俺で慰めといたぜ」
笑う加瀬の背後に、スーツ姿の男たちが近付く。
「これで本当に兄弟だな?なぁ?貴遠?」
スーツ姿の男は、あからさまな侮蔑の顔を浮かべ、加瀬を見ている。
「やっぱ口もきいてくれねぇか、薄情な兄貴だな、なぁ、お前らもそう思わねぇ?」
男たちは無言で加瀬の腕を拘束し、貴遠の元へ加瀬を突き出すように近付く。
「ハ…ッ、お前も出世したなぁ?人を従えるなんざ、ピーピー泣いてたあの頃とは変わったってことか」
睨みつけていた貴遠は加瀬から視線を反らし、白いベンツに乗り込む。加瀬が舌を出すと、窓が無音で開いた。
加瀬が何事かと見る中で、車内の貴遠は一言、
「…殺すな」
と言い残し、白いベンツは走り去った。
「おーこわ」
加瀬は、走り去ったベンツを見て、軽く呟いた。解こうとした腕は、更にきつく固められていた。
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