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6-4
「お前見てるとその、手が先に出て…」
「………」
「愛とか、愛し合うとか、そんな生優しいものじゃなくて…なんだ…何言ってんだ?俺は」
目を逸らした加瀬は、頬が染まっていた。
「ガキじゃあるまいし、好きとか、そんな言葉じゃない」
「加瀬」
愁は、加瀬の名を呼ぶと、その体を引き寄せるように加瀬の唇を塞いだ。愁のすぐ目の前の双眸は、驚いたように瞠目していた。
「責任とれよな。もう、俺、濡れてるんだけど」
愁は、頬を流れる涙をそのまま、加瀬を見つめた。言って、もう一度唇を合わせた。深く、加瀬が、その体をベッドに押し付けるまで。
「あ…、加瀬…」
愁は、加瀬の愛撫を痺れるように感じていた。加瀬は、愁の乳首を吸い上げると、そのピアスを口に咥え、引っ張った。
「あッ、つ、待っ…」
「コレがいいんだろ?シュウ」
愁は、頬を膨らませた。そして、目を逸らし、頷く。加瀬は、何かに気付いたように愁の目前に顔を寄せると、赤面した愁の唇に、噛み付く様に口付けた。愁も、負けずにその唇を追う。吐息が熱く絡み、肌が上気していくのを感じた。
ふと、離れた加瀬が熱く囁いた。
「やらしいキスしやがって、この淫乱」
「おまえだって、相変わらずアブノーマルなことばっかり」
「お前の体がそうなんだろうが」
愁は、笑って、その首に腕を回した。濡れた熱い舌をその肌に這わせて、加瀬はきつくその体を抱きしめた。
軋みなど、忘れて気付かぬほど、強く。
『僕は誰も選べない』おわり
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