7 / 7
灰 あとがき
最後までお読み下さって本当にありがとうございます!この作品は、トラウマアンソロジーの企画で書かせて頂いたものに、加筆修正したものになります
「ソドムフレイムの消炎」はトラウマ、兄弟もの、というテーマで書きました。
トラウマというものを考えていて一般的に何に怖れを感じるかを想像したとき、最初に浮かんだのはやはり典型的なもので「火」でした。
触れると痛みが生じるもの、というのはやはり恐ろしいものです。作中内では名前が無いまま綴っていた彼らの「義父」も触れることが出来ないもの、理解しがたいもの、として「兄弟間に生じた情愛」を恐れていたのではないかと考えながら彼を動かしていました。そしてその「兄弟間の情愛」のことを「炎」として表現しました。
浩介はずっと彼を警戒していましたが、始めの頃の彼はもしかしたらごく普通に兄弟を我が子として愛し、彼らの母親と幸せな家庭を築きたかっただけかもしれません。
しかし、そんな彼の理想の障害となったのが例の「炎」でした。自分達の実の母親をも顧みないほどにベッタリと互いだけを守ろうとする距離の近過ぎる兄弟は、彼にとって驚異でしかなかったことでしょう。彼は初見から二人の異常性に気づいています。
彼は愛しい妻との理想の家庭像を守りたいがため、我が子となった兄弟を無理矢理にでも更生させ、穏やかに暮らしたかったことでしょう。その願いが通じずにいずれひどく歪んでいきますが、諦めることなく揺さぶりを続いていたことから、彼は自分の家族を最後まで愛していたのだと思います。けれど、それは届くことなく、そして理想も叶うことなく、何も伝わらないまま彼は炎にまかれてしまいました。
彼が命を落とした部分は作中では濁してはいますが、浩介自身が語っているように、彼はとても頭が良く、秩序や規則をとても重んじる人間で、毎日模範的な生活を送るようなきっちりとした人間の印象を想像しながら書いていました。
そんな彼が不注意で車道に出て事故に遭う、という不自然な死因で亡くなります。呆気ない最期を迎える彼こそが兄弟にとっての「炎」でした。触れることができない、理解できない、恐ろしいものです。
彼とは違い兄弟は「消炎」に成功しています。兄弟にとって恐怖の権化であった「炎」を「消し」ました。
「ソドムフレイム」とは「同性愛を焼く業火」兄弟の目線から見た「義父」そのものを差します。奏介の背に残った火傷は、兄弟ふたりの「炎」の前に、彼の炎「ソドムフレイム」によって焼かれて作られています。その「ソドムフレイム」こそ、彼から二人に向けられた父性愛だと考えながら書いたお話です。
ありがとうございました!
九龍 ROKI
ともだちにシェアしよう!