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第24話【僕等の未来】(了)
世界はきっと、僕等を理解出来ない。そう気付いたのは、僕が壊れるずっと前。初めて、父親に僕等を間違えられた時。
あの時、僕は酷く傷付いていた。その姿を見て、僕は酷く驚いたものさ。
『いわせておけばいい、いわせておけばいいんだよ……ッ』
泣きそうな顔をしながら、僕はそう言っていた。僕に言っているのではなく、僕自身に言い聞かせているような……そんな、言葉。
僕が僕を分かっているのに、どうして僕は悲しむのだろう。その事実だけが、僕の胸を痛みで穿つ。
挙句の果てには、僕が僕を殺してしまおうとしている気がして……怖くなった。
――だから、僕が僕の代わりになったのだ。
一応言っておくけれど……それは決して、優しさじゃない。
――思い知って欲しかっただけさ。
色々と遠回りをしたけれど、やっと僕は分かってくれたみたい。だったら、それでいいさ。
僕と僕の事を、他者が理解出来なくたっていい。
――僕はやっと、僕自身を見てくれたみたいだ。
痛みも、悲しみも、苦しみも……全部、僕のものじゃない。それは、僕のものだ。そこに僕が気付けたのなら、それでいい。
――可愛い可愛い、僕だけの僕。
――僕はもう、偽らない。
――だからこれは、素敵で無敵な結末。
「一太郎君、今日は……一緒に、寝たい……」
素直に甘える言動は、まだ慣れていないみたい。でも、そんなところも可愛いのだから困りものだね。これ以上僕を好きにさせてどうするの? 放してあげられなくなっちゃうよ? ……あぁ、本よりそんなつもりは無かったっけ。ごめんね、ごめん。
ベッドに寝転がりながら、両腕を広げる。僕は恥ずかしそうに視線を彷徨わせたけれど、甘えたいのは事実。ゆっくり、おずおずと近づいて来た。
「子守唄でも歌おうか?」
「僕は音痴だから、一太郎君も音痴だよ」
酷いけれど、全くもってその通りなのだから仕方ない。少し素っ気無い言い方が照れ隠しなのも、僕は知っている。益々可愛くて仕方ない。
「なら、絵本なんてどうだろう?」
「誰かが考えた話より、一太郎君の話が聴きたい……っ」
困った、本当に困った。好きに上限が無いなんて、教わってないよ。
ベッドに僕を押さえ込むと、驚いたような表情を向けられる。今日だけで三回目だから、驚くのも無理はない。僕だって驚いているさ。
――でも、僕が悪い。だから、仕方ないのさ。
「僕が今、何シたいか……聴きたい?」
僕の腕と脚で退路を塞がれた僕は、行き場の失った両手を強く握る。
そして、こくりと小さく頷いた。
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