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第5話
「クソッ!」
部屋に戻った悠真はベッドにある枕を投げた。
「俺のことが知りたいなんて、嘘つき」
Ωだから何をしても靡くと思ってる。きっとそうだ。αというものはそういうもの。父 を見て学んだんだ。
悠真は自分を納得させるように呟く。
「だいたい、なんなんだよあいつ」
先程の自分がβだったら・・・と言った唯月の顔を思い浮かべる。
「ッ!」
ブルっと背筋が凍り、思わずチョーカーを触る。
あの時の唯月は、目がいつもとは違っていた。まるで逃がさないと言っているような。
いや、気のせいだろう。悠真は発情期もまだ来ていないためただのβと一緒なのだから。性欲処理として使うならむかない。
「マジで意味わかんねー」
色々なことが頭の中でぐちゃぐちゃに混ざって混乱する。3ヶ月間、この間口で暮らしたが皆が優しく悠真に接した。安心させるように。
それが逆に悠真にとっては恐怖でしかないのにもかかわらず。知らないことを知るということは心に余裕がなければならない。そんな余裕なんてない悠真は怯えた。
「クソッ、クソッ! 俺がΩじゃなかったら・・・!」
Ωじゃなかったらきっとこんな思いしなかったのに。
気持ちの悪いくらい優しくされて、でも、αは敵で。そんな想いにとらわれなくて済んだのに。
間口家が用意してくれたベッドに横になる。ふかふかしていて、いい感じに身体にフイットするベッド。ここで、人生で初めて床以外で寝た。
ここの人達は悠真が欲しかったものをくれる。
それでも心が満たされないのはどうすればいいんだろうか。
「分かんねーよ」
何も考えたくなくて、悠真は瞼をゆっくり閉じた。
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