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第4話
「悠真、友達はできたかな?」
「別にアンタには関係ないだろ」
入学式が終わった夜の食事中、唯月は微笑みながら聞いた。聞かれた悠真はいつも通り冷たく返事をする。悠真にとって、ここはαの巣窟なわけで心を開かない。
「関係ないかもしれないけど、僕は悠真の事が知りたいよ」
唯月は諦めが悪い。悠真がどれだけ冷たくしても話しかけてコミュニケーションを取ろうとする。
「俺は、αには言いたくない」
「なら、僕がβになればいいのか。もしくはΩに・・・」
「はあ?!」
この男はたまに意味のわからない発言をする。
「そうすれば、悠真は僕に自身のこと教えてくれるんだろう?」
「そういう問題じゃないだろ!」
調子が狂わされる。
じゃあどういう問題なのかとキョトンとする唯月の顔に腹が立つ。
「・・・ごちそうさま」
イラつきに耐えられなくなった悠真は小さく呟くと席を立った。
「もう寝るのかい?」
「・・・・・・」
悠真は無視して部屋を出た。
「・・・はあ。いつまで経っても悠真と仲良くなれないなあ」
先程まで悠真が座っていた席をボーッと眺める。
「どうした唯月」
「父さん」
和彦が帰ってきたようだ。自分の席に座って食事を始める。
「いえ、ちょっと悠真と仲良くなれないなと」
苦笑をしながら答えた。
「あの子はあの歳で色々なものを抱えているからね。そう簡単には心を開かないさ」
「・・・ですね」
「それにしても私が1番驚いているのは唯月、お前だよ」
和彦はマナーとしては悪い、肘をテーブルについて唯月を見た。
「あまり人間に興味の持たないお前が、持つだなんてね」
「興味がなかった訳じゃないですよ」
「だが、これと言って興味がある訳でもなかった」
ああ言えばこう言う。
「まあとにかく私としては嬉しいよ。こうして変わっていく二人が見れて」
和彦が微笑んだ。唯月は少し眉を寄せると、食事を素早く済ませて席を立つ。
「では、父さん。僕はそろそろ寝ます。おやすみなさい」
「もう寝るのか? おやすみ」
どこかでしたような会話をして、唯月も部屋を出たのだった。
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