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第1話
自分がいったいいつからここにいるのか、まったく覚えていない。
閉じ込められている。
そう認識したのは、十歳の誕生日だった。
その日、初めてまともな依頼人がやってきた。
膨らんだ頰肉をさらに持ち上げて穏やかに笑んだ男は、丁寧にフルネームを名乗り、さらに自分は牧師だと付け加えた。
その男が何故僕なんかに会う必要があったのか、今となってはその理由は分からない。
彼はすでに死んでしまったのだから。
僕には、未来が視 える。
どんな色や形であっても、瞳を覗き込めば持ち主の未来がわかる。
そのビジョンは早回しの映像のように次々と頭の中を駆け巡り、やがて終わる。
生まれながらにして授かった『力』だと、ドクターは言った。
神からの賜りものだ――と。
「アンジェ、私と一緒に来るかい……?」
そう言って牧師は、僕に震える手を差し出した。
僕はその肉厚で脂ぎった手のひらをしばし見下ろしてから、彼を見上げた。
二度目の走馬灯は、一度目となにも変わらなかった。
彼が仰向けに倒れる角度も、スピードも、背中に広がる血溜まりの大きさまで、寸分違わず同じだった。
だから僕は、再び告げた。
あなたは一週間後に死ぬ――と。
そして彼は去り、死んだ。
あれから四年。
僕は今日、十四歳になる。
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