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第10話
「…………」
ダグラスは無言でファイルを閉じた。
思わず引き込まれるように一気読みしてしまったが、途中でついもらい泣きしそうになった。被疑者に感情移入してはいけないのだが、これは確かに同情に値する。
――せめて、最後の願いくらいは叶えてやるか……。
ダグラスはスマホで電話をかけた。数コール音の後、仲のいい鑑識が電話に出てくれた。
「ああ、俺だよ。今現場に来てるんだが、やっぱりこれは事故で間違いなさそうだ。ああ、事件性はゼロだな。お前らも適当に切り上げていいわ。
……あ、それと……小平和人の墓の場所を調べといてくれないか? ……いや、だから『カズト・コダイラ』だよ。ケイト博士の実の兄だったんだ。
……え? 違う、日本にあるんだよ。事件の処理が終わったら、そこに博士を埋葬しに行こうかと思ってな。俺にとってはちょっとした小旅行だ。
……え? いや、ほんの気まぐれさ。一度日本には行ってみたかったんでね。ははは……」
【終】
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