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第5話
面倒な面倒な授業もなんとか終わりを告げた。
今日も1日学校お疲れ様です、晴様って心で自分に伝える。
兄さんにお祝い様のケーキでも買って帰ろうか、そうしたら誕生日ケーキはやっぱりショートケーキで決まりだな。
そう1人で考えながら教室を颯爽と出ていこうとする。
『晴君っ!今日一緒に帰らなーい?』
『じゃああたしも晴君と帰りたーい!』
『晴!一緒に帰ろうぜ!』
朝みたいに次々と声がかかる。
『悪い』と1人1人の顔を観ながら断りをいれ苦笑いで人気者の象徴である廊下をさっていく。
そこから上履きから靴に履き替えようとすると、頬を赤らめながらじっと俺をみてくる何人かの女子に目も合わせずすぐに去る。
正直鬱陶しいとしか思いようがない。
人に好かれるのに慣れすぎている自分がいるのが改めて分かる。
そうして校門を出ようとすると、校門前の大きな道路に見慣れた黒の綺麗な車がとまっていて、周りから、なかなかの注目をあびている。
すぐにそれは兄さんの高級な愛車だと俺は気づいた。
兄さんの愛車と分かった時点ですぐにその愛車へと駆け寄る。
車に駆け寄るとすぐに俺に気付き車から降りてきたのは、やはり兄さんであった。
『兄さん!なんで校門前なんかに?』
『たまたま出掛けていたら学校が終わる時間だと気づいてね、寄ってみたんだよ』
『連絡くらいくれれば良かったのに…!』
『そんなに迷惑だったかい?』
たまに兄さんは些細な事で俺に切ない顔をする。
まるで自分なんかいらないのかと、問いかけるような表情。それが兄さんの今の表情だ。
その瞳の奥は真っ暗で、何か抑えているようにも思える。そんな表情は俺には兄さんを読み取れないから苦手だ。
『そんなことないよ。ありがとう兄さん!』
『じゃあ帰ろうか、晴』
そう2人笑顔で俺は助手席のドアを開けようとする。
『晴ーーー!!!ちょっと待ちなさいっ!!』
葵だ。声でわかる。
今思うと、ここからが、兄さんと俺の関係が崩れた原因だ。
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