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第6話

俺と兄さんは、2人笑顔で俺は助手席のドアを開けて車に乗ろうとしてる時だった。 『晴ーーー!!!ちょっと待ちなさいっ!!』 聞きなれた声過ぎて分かる。葵だ。 少し息をきらしながら、俺へと速足で近づいてくる。 『なんだよ、俺は今から兄さんと帰る予定なんだけど』 『みたら分かるわよ!!あ、こんにちは!お兄さん!!』 そう呆然と葵をみている兄に葵は明るく挨拶をする。兄もいつも通り優しい笑顔で挨拶をかえす。 『こんにちは。葵ちゃん。…ところで晴になにか用かな?』 兄さんの表情は、いつも通り優しく、人当たり良さそうだが、葵の事を鬱陶しそうな聞き方な様な気がした。 『…今日の夜、お兄さんの誕生日なのは分かるんですけど、少し晴を貸してくれませんか!?』 いつも葵が突拍子のないことを言うのは分かっているが、さすがに驚いた。 そんな真剣な表情の葵は、幼なじみの俺であっても珍しく感じる。 『…晴は、どうしたいの?』 そう冷静で何を考えてるのか分からない自分の兄に問いかけられる。 正直、夜に葵に会ってみたい。 そう望むのは、恋愛とか関係なく、真剣に葵が頼んでいるのと、今日が葵の誕生日でもあるからだ。 だけれども、兄さんの事を考えると、兄さんには家族は俺だけしかいない。 俺も兄さんだけが家族である。 そんな大事な存在の人を盛大に祝わなくては駄目だ。葵のもとに行ったら兄さんはきっと1人で寂しくなるだろう。 この世で1人しかいない俺の家族は兄さんなのだから。 『悪い、今日の夜、葵とは会えない』 はっきり葵にそう言った。 相当悪いと思う。でも兄さんをとりたいんだ。 少し葵は寂しそうに俺をみつめ、無理した笑顔で笑いながら発した。 『全然!大丈夫よ!兄さんを盛大に祝ってあげなさいよ~?』 凄くその無理した顔に心が痛んだ。 妙な罪悪感がする。 そんな罪悪感などさとらないように、兄さんは俺に笑顔を向けた。 『さあ、晴。家に帰ろう』 『そうだね、兄さん。葵、ごめんな』 『さよなら葵ちゃん』 兄さんは葵を嫌っているのだろうか、そのさよならはかなりキツい言い方に感じる。 そうして颯爽と助手席へと俺を案内するみたいに座らせる。 葵に恋愛感情など全くないが、唯一の幼なじみに悪いことをした気分が凄くした。 車をいつもより楽々と運転してる様に思える兄さんのその時の瞳は、光があるようにみえた。

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