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第8話
晴は口を塞がれてから、何にも抵抗できなく唖然としていた。
そんな晴を愛しそうに貴重な大事なもののように見つめる兄の晶。
そんな晶の顔も、いつも通りとても美しい。
晶の顔に疑問を頂きながら、恐ろしさと信じられない気持ちが混ざった様な目でただ兄を見つめるしかない晴。
『ねぇ、晴。今からゲームをしよう』
いつもの冷静な口調で優しく晶は言う。
そんな兄の冷静さを不気味に思う晴。
『今から君が僕を愛すまで家から出させないから』
『…おい、どうしちゃったんだよ、兄さん』
あの優しかった兄が消えた様な気がした。
震えながら前のようにもどってほしい晶の両手首をつかむ晴。
晴の嘘だと訴えるような瞳にうっとりしながら見詰める晶。
『本当だよ、これから晴が僕しかみえないようにするんだ!!!そしてもう晴は僕しかいないようにする!!!!!最高じゃないか!!!今日僕は実感したよ、あの邪魔な女がお前とくっつくんじゃないかと!!!そんなことさせない!なあ、いつも僕は晴に優しく優しく接してきたよねえ?絶対僕を愛せるよ!!愛すまで誰とも会えないから愛すのは当然か!!!でももし晴が僕を愛せなかったら!?もう一生一緒!!!!!!ははは!!!!』
狂った様に笑う晶。
その自分の願望に染まって狂った晶は今まで晴が目にしたことないものであった。
晴はそんな見たことない兄をみて泣くしかなかった。
こんな兄をなぜ気づかなかったのか、もう全て分からなくなっていた。夢だと思いたい。受け入れがたい兄がそこにはいた。
晴はダラダラと冷や汗をたらしながら『兄さん…』と呟く。体の力も全て抜けて気力も何もかもなくなっている。
そんな晴に小さく兄は優しく呟いた。
『ごめんね、晴。今日からずっと僕達は一緒さ』
その晴を優しく握っている手はあの懐かしい手ではもうなかった。
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