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 俺のベッドでの定位置は、向かって右側の端っこ。 これは初めて聖南とエッチした日から変わらない。  いつも絡み合うようにして寝てるっていうのに(絡み付かれてるって言い方が正しい)、最近は聖南が隣に居ないから、俺はひとり寂しく丸まって寝るのが癖になってる。  おかげで全然寝た気がしない。  人肌が恋しいだけじゃなく、平熱が高い聖南の体温を感じながらじゃないと俺は安眠出来なくなった。  聖南は前々から、俺が居た方が熟睡出来るって言ってくれてたけど、俺もようやくそれを実感し始めてるんだ。  だからほんとに、ほんとに、寂しかった。  自分の言った事が自らの首を絞めるとは思わなかったよ……こう何日も、すぐそばに居る聖南と触れ合えないなんて、我慢出来るはずない。  聖南がポカポカをくれないと、俺は眠れなくなっちゃったんだよ。 「あ、……」  ……シャワーの音が止まった。  俺が洗濯したふかふかのタオルで体を拭いてる聖南を想像するともう、胸がいっぱいになってくる。  分かりやすい愛情を平然と、それがいかにも当たり前みたいに与えてくれる聖南が、俺をこんな甘えん坊なワガママにしたんだ。  誰よりもその手を煩わせたくないと思ってたのに、自分で自分が許せないのに、それを見失っちゃうくらい聖南の事が好きになっちゃったんだ。  どうしてくれるのって訳の分かんない逆ギレしちゃいそうだよ。 「葉璃ーー!!」 「…………っっ」  薄いのに肌触りがふわっふわな布団に潜り込んでソワソワしていた俺は、勢いよくその布団ごと聖南に抱き締められて一瞬にして心臓がうるさくなった。  聖南が体重をかけてくる。  ……重たい……重たいよ、聖南……。 愛情がダダ漏れで苦しいくらい重たいよ……。   「嬉しいなぁ……葉璃はああいう自己主張ってあんましないじゃん? だから俺いまめちゃくちゃ幸せー♡」  俺にかかっていた重みが無くなって、布団に潜り込んできた聖南が喜びを爆発させてきた。  後ろからちょっと強めに抱き締めてくる、欲しかったポカポカ。  絡ませてくる長い足が、膝を抱えて丸まっていた俺の足を無理やり伸ばしてきた。  これはどう考えても、俺が寝付くまで添い寝に付き合ってやるかって感じじゃない。 「聖南さん……ほんとに寝るの……?」 「うん。 葉璃と寝るー」  うなじをスンスンと嗅がれて、ちゅ、ちゅ、と肩にキスされて、ついでに甘噛みしてくる歯先が肌にチクチクしてくすぐったい。  可愛いマーキングをしながら、甘ったるく低い声で歓喜している聖南は今どんな顔してるんだろう。  俺が仕事中に声を掛けたからパソコンの電源は入りっぱなしだった……仕事、途中だったんじゃないのかな。  でも嬉しいや。 急ぎの仕事を迷わず切り上げて俺を優先してくれた事で、聖南の想いの丈を図れる。  聖南に甘えて、どっぷり浸かって、秘密の恋に胸を踊らせる。 みんなの「セナ」は、俺だけの「聖南」なんだって実感する。  あぁ……でもでも、我慢出来ないからって無意識に仕事の邪魔しちゃったのはよくなかったよね。 とか言って、ほんとは嬉しくて嬉しくてたまんないくせに聖南の顔ひとつ見られない俺はワガママの極みだ。  …………だめだよ、何をまたぐるぐるしてるの、俺。  期待したり、喜んだり、罪悪感に駆られたり、情緒不安定もいい加減にしないといつか聖南に呆れられちゃうよ。  近頃は自分でも手を焼くこの性格、できるものなら治したい。  今なら小さい頃の春香の気持ちが痛いほどよく分かる。 葉璃見てたらイライラする!と脈絡なく怒鳴られた苦い思い出まで蘇ってきて、いくつもの感情に揺れた俺はみるみる身を縮ませていった。 「なんだよ、来ちゃダメだったのか? 枕持って「添い寝してください聖南さん♡」って言ったのは葉璃だろ?」 「そんな事言ってないですよっ」 「言ってた言ってた」 「……い、言ってないもん……」 「なんで膨れるんだよ。 こっち向いて、葉璃。 今日はぎゅってして寝ような?」  さらに体を丸めてウジウジしようとした俺は、簡単に聖南の方を向かされてイジける間もなかった。  パンツしか履いてない聖南に一際ぎゅっと抱かれる。  直に体温を感じさせられて、おまけに聖南とボディーソープが混ざったにおいに全身がキュンキュンした。 「……聖南さん……」 「ごめんな。 俺の尻にでっけぇ火が付いてっから葉璃ちゃん構えてなかった。 ダメな旦那だよな」 「いえそんな……。 俺、聖南さんの邪魔はしないって豪語したのに、三日も聖南さんと寝られなかったから、あの、……さ、寂しくて……」 「…………かわいー……」 「可愛くないです……聖南さんの仕事を邪魔した俺は最低な恋人です。 明日からあっちの部屋で寝ます。 すみません……」 「いやいやいや、そこでネガティブ発揮するなよ。 仕事も大事だけど、俺にとっては葉璃が一番大事。 寂しい思いさせてごめんな?」  こんなに我慢出来ないなら別の部屋で寝る。 いっその事、借りっぱなしで勿体無いからしばらくは隣で暮らしたっていい。  聖南の温もりに甘えてしまう。 困らせたくはないのに、どうしても触りたくなってしまう。  ─── 葉璃が一番大事。 何よりも最優先。  いつも聖南はこう言ってくれる。  俺がジメジメしていても、太陽みたいにあったかくて眩しい聖南が颯爽と現れて、湿っぽい俺をポカポカで満たしてくれる。  集中力が重要な創作活動を後回しにさせてしまった俺に「嬉しい」と満開の笑顔を見せてくれたあげく、聖南の方が俺に謝るなんて……どうして……?  どうして……。 「……なんでそんなに、優しいんですか……」 「葉璃の事が好きだから。 愛してるから」 「うぅぅ……っ、かっこいい……っ」  即答なんてずるい。  そんなの聞くまでもないだろってカッコよく笑わないでよ。  俺には聖南が眩し過ぎるよ。  もう誰にもあげられないけど、俺だけが独占しておくのは申し訳ないくらい、俺の聖南がとんでもなくカッコいいよ。 「えぇっ? 葉璃泣いてんのっ? どしたんだよ、そんな寂しかったのか? ごめんな? 泣きやんで? どうやったら笑ってくれる? ほら、聖南さんここにいるよ? 寂しくないだろ?」 「……聖南さんのばかっ、カッコ良過ぎます……っ、俺の方がばかだけど……っ」 「何? もう〜どしたんだよ、俺ダメなんだってば! 葉璃の泣き顔が好きなのはセックスの時だけなんだよー!」 「うぅぅ……っっ」  

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