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50❤︎⑦※

 自分での挿入を課された葉璃の顔は真っ赤に染まり、苦悶の表情を浮かべ、聖南に至ってはこれ以上ない焦らしに遭っている。  張り詰めて痛い性器が待ちわびているそこまで、あと数ミリなのだ。  聖南が腰を動かせば魅惑の悦が待っているが、不安そうな葉璃はなかなか腰を落とさない。  初めての行為に戸惑うのは当然なので、聖南はほんの少しだけ手伝う事にした。 「葉璃、手貸して」 「は、はい……っ?」 「ぎゅって握ってろ。俺が支えとく」 「はい、……っ」  差し出してきた両手を取り、ガッチリと絡ませて手首から支えてやると、葉璃は意を決したようにまぶたを閉じた。  ちょんと孔に触れた性器の強度は申し分無く、多少の反発はあるだろうが重力に逆らう事さえしなければ手を添えなくとも挿入っていく。  握り合った葉璃の手に力が入ると同時、聖南の一番敏感な場所が待ち望んだ窮屈さを感じた。 「んっ……あっ……!」 「そうそう、そのままゆっくり腰落として。一気にいこうとするなよ。二週間以上空いてんだ。焦んなくていい」 「は、はい……っ。んん……っ」  キツい抵抗に遭いながらも、たっぷりと慣らしたおかげで亀頭部分がずぶっと挿入ったが葉璃は痛がらなかった。  とはいえ、握り合った指先にさらに力を込めた葉璃の眉間が険しい。強烈な異物感と圧迫感に息を詰めていて、聖南から言われなくても〝一気に〟はとても無理そうである。  一方の聖南は、葉璃が自分で腰を落としてくれている感動と、少々強めの締め付けられる感覚にうっとりと溜め息を漏らした。 「葉璃……俺もう気持ちいー……」 「う、っ……そ、そう、ですか……っ」 「ちゃんと呼吸しろ、葉璃。焦んなくていいって言っただろ」 「あ、あ、焦っては、ないんですけど……んっ! 久しぶり、だから……っ、くる、苦しくて、……っ」  ──か、かわいー……。こんな可愛かったっけ……。  恋人の欲目も多大にありながら、葉璃が宇宙一可愛いのはもう十二分に知っていたはずなのだが……。  顔を顰め、聖南の手を力いっぱい握り、自らの意思で腰を落として恋人の性器を埋めている葉璃を見て、改めて聖南は胸をときめかせていた。  まだ亀頭のすべてすら収まっていない。  徐々にでいいと言った手前、聖南が動くわけにはいかず大人しくしているが非常にもどかしい。  そこで聖南は唐突に、思い出した。  痛がらないよう、違和感なく快楽を求められるよう、はじめに挿入する際はいつも葉璃の顔色を見ながら時間をかけていた。  どれだけ性急に突き立てたくとも、額に汗が滲むほどゆっくりゆっくり拓いてやり、ひとまずの奥で留まって自身を葉璃に馴染ませる。  合間に胸の小さな突起を味わい、耳や首筋を舐めたりする事も忘れない。  ──あぁ、あんま騎乗位しねぇのは俺が葉璃を愛せねぇからか。  今どうしてこれほどまでにもどかしいのか、ようやく分かった。  挿入にモタついているからではなく、聖南から葉璃への愛撫が施せないのが理由だった。 「はぅ……うぅっ……」  もっとキスしたい、いろんなところを舐め回したい、脇腹や太ももの内側に聖南の証を付けたい……と、そんなことを考えている間にも、葉璃は苦しげな声を上げて一人で頑張っている。  少しずつ、温かくて窮屈な襞を割っている感覚はあり、いたいけな葉璃の頑張りに聖南は終始感動を覚えた。 「葉璃、全部挿れんのは無理だろうから、あと少しだけ頑張れ」 「んんっ……っ! はぅぅっ……っ」  小さく頷くその仕草さえ、たまらなく可愛い。  葉璃への愛撫ができないのは大きな減点だが、このいかにもな姿と彼の埋めたい欲を垣間見る事が出来るのは騎乗位ならではなのかもしれない。  頑張り続ける葉璃の手を、聖南も力強く握り返す。  ようやく先端を収まりきると、葉璃が「んっ」と顎を仰け反らせた。 「大丈夫か? 痛い?」 「んっ、い、いえ……っ。いたく、ない……」 「ほんとに? 我慢してない?」 「し、して、ない……! やっ、……もうっ……おっきぃ……っ」 「クッ……」  小休憩を挟んでいた葉璃を見かね、聖南がほんのわずか腰を動かした拍子に少しだけ性器を埋めてしまった。  すると葉璃は、何とも男心をくすぐる発言で聖南のハートを攫う。  質が悪い、と片目を細めた聖南のリミッターが、ついに外れてしまいそうだ。 「葉璃……その無自覚に人の心持ってくの、マジで勘弁して」 「なに、なんの話で、……あぁっ……待っ……!」 「可愛すぎ」  じわじわと腰を動かし、葉璃の意思を待たずに聖南は性器を埋めていった。  葉璃が限界そうだから。葉璃が聖南の心臓を予告無く撃ち抜いたから。葉璃が、我慢できなくさせたから──。  ひたすら心の中で言い訳をする聖南は、自分が我慢強い方だとは微塵も思わない。  よって、少しくらい挿入の手伝いをしたっていいという勝手な結論を出し、葉璃を困惑させた。 「あっ、せなさん……っ! まって、なんで……っ」 「まだ半分だけど。どうする? ちょっと腰動かしてみる?」 「へ? あぅ……っ、んっ……」 「葉璃、腰動かしてみて。聖南さんの聖南さんはなぁ、大体今……この辺まで入ってんだよ。いいとこ当たるよ」 「え……い、いや……っ、そんなのできな……っ! んん……っ」  薄い下腹部をふにふにと押し、挿入途中の性器が彼のいいところに当たると教えてやるも、小さく首を振る葉璃はそれどころではないといった表情を浮かべている。  ならばと、聖南は右手を離し二度目を望んだ可愛らしい葉璃の分身をきゅっと握った。 「やだ、っ……、せなさ、……っ! 触っちゃ……っ」 「そんな事言って。腰動いてんじゃん」 「だ、だって……! やぁっ! だめ、あっ……や、んっ……!」 「はぁぁ……気持ちいー……。気持ちいいな、葉璃」 「んん……っ!」  意思とは関係なく、性器をいじられると淫らに動いてしまう細腰に聖南も吐息を溢さずにいられない。

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