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8.俺の隣(16)

* * *  来週から、1学期の期末試験が始まる。  柊翔は、もう剣道部は引退した。県大会の後、しばらく、ずっと落ち込んでいたのは、試合のことだけではなかったのは、見ていてもわかる。試合直後から、河合先輩が学校に来なくなったから。  ……その理由については詳しいことは教えてくれないけど。  たぶん。柊翔のあのことと関係があるんじゃないかって、思っていたりする。なんとなく、柊翔を見ていたあの人の目を思い出すと、少しだけ、心の片隅が痛くなる。きっと、あの人も柊翔のことを……。 「要?」  帰りの電車の中、ぼーっとしていた俺の顔をのぞきこんでくる柊翔。 「はい?」 「大丈夫か?」  心配されそうな顔をしてたのかな。 「大丈夫ですよ」  ニコリと笑って、柊翔の腕に手を添える。 「今日は、久しぶりにおばさんの顔を見に、病院に行くか?」 「え、いいんですか?」 「しばらく、行ってないしな。」  窓の外を見ながら、添えていた俺の手の上に、柊翔の手が重ねられた。 「……要」 「はい?」  俺の耳元に唇をよせてきた。 「……ずっと、俺の隣にいてくれよな」  小さく囁く、その甘い声に、俺も顔が熱くなる。隣に顔を向けると、自分が言った言葉を恥ずかしそうに少し顔を赤らめている柊翔が愛しくて。 「柊翔さんこそ……隣にいてください」  ほどほどに込み合っている電車の中、どこかの高校の女の子の集団の会話が盛り上がっている声が聞こえてくる。そんな中の、俺たちの会話なんて、誰が聞くわけもなく。二人、目を合わせて、微笑んだ。 俺の隣には、あなたしかいないから。 -Fin-

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