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8.俺の隣(15)

「柊翔は……わかってるんですか……そいつのこと……」 「ええ……先日、亮平さんから連絡がいってると思いますよ」  それなのに、そいつに身を任せたのか。それだけ、相手を信じていたのか。  ただ、そこにいた相手を認識できないほどの状態だったのか。  もう一度、後部座席のほうを振り向く。太山は、二人の幸せそうな寝顔に救われるような気がした。 「そろそろ、鴻上くんのご自宅近くになりますが。太山さんは、それで大丈夫ですか?」 「あ、はい。柊翔のことが心配ですから、今日は泊まらせてもらおうかと」 「……獅子倉くんは」 「彼も、鴻上の家で面倒みますよ。こいつも心配でしょうから」 「たぶん、鴻上くん、睡眠薬でも飲まされたんでしょう。十分眠りましたから、そろそろ起きだすのでは?」  睡眠薬……そいつは、そんなものを日頃から持ち歩いていた、ということか。それとも……計画的?考えたところで、本人に聞かなければわからない。  そしてきっと、その本人と会うことは二度とないような気がした。  柊翔の住んでいるマンションの前に、車は止まった。 「鴻上くん、獅子倉くん、そろそろ起きてください」  宇野が後ろに寝ている二人に優しく声をかけると、要のほうが先に目を覚ました。 「へ……?うわ、すみません。ずっと寝っぱなしで」  あたふたとしながら、まだ眠っている柊翔を揺り起こそうとする。 「……え。何?」  いまだに、どこか寝ぼけている柊翔を、太山と要は二人がかりで、車から降ろした。太山は、トランクから柊翔の荷物を出すと、三人はお辞儀をしてエレベーターホールに向かって歩いていく。  宇野は車に背を預けながら、スーツからタバコを取り出して口に咥え、火をつける。 「……もう二度と会うこともないだろうけどね。」  微かに微笑みながら、三人の姿が消えるのを見送った。

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