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「お前のここ、すっげぇ濡れてる。いつも発情期はこうなるのか?」 「発情期はもっと、……んっ」 「もっと……って、それはぜひとも発情期のお前にも触れてみたいな」 司は獲物を前にした狼のように興奮した様子で舌なめずりをした。既にとろとろになった後孔に触れたその指を、俺のそこは時間をかけなくともあっさりと飲み込んでしまった。ぐちゅぐちゅと自分から聞こえる卑猥な音にさえ息が荒くなる。 「なぁキスは? していいのか?」 「したいの?」 「あぁ……、漏れる声も息も全て喰ってしまいたいくらいだ。思いっきりキスをしてぇ」 「よくそんなに恥ずかしいことが言えるな」 「うるせぇよ、ばーか」 「ふぅ、っ」 噛みつかれた。キスなんて優しいものじゃあない。本当に食べられてしまう。 「真人、お前やべぇ可愛いよ。……もう限界」 「あああッ」 初めてそこに入れられたペニスは異物感がひどいけれど、司に抱きしめられ匂いに包まれたあの時みたいに温かな安心感もあった。一度ここにこの熱を与えられればもう、これ無しでは生きていけないとすら思ってしまった。ほしい。……ほしい、ほしい。もっと深くまで。 「司、動いて……」 腕を伸ばし、背中へとしがみついた。体重をかけて奥深くへと侵入してきたそれに自分でも驚くほどの、気持ち良さを隠しきれない声が溢れ出る。 「あっ、ン」 「気持ちいい?」 知りたくなかった。やはり触れられるべきではなかったんだ。離したくない。これっきりだったらどうしようと、後悔されたらどうしようと、怖くなった。 「もっと、」 「もっと?」 「もっと、もっと……! 全然足りないっ」 「はっ」 ぼろぼろと泣きながら彼を欲した。……どうしよう。司、俺はどうしたらいい? 「司……」 「ん?」 「噛んで……、俺のうなじ……」 「えっ、」 噛まれたくてたまらない。今は発情期ではないから噛まれたからと言って何か変わるわけでもないのに。それでも俺の本能が噛んでほしいとそう訴えてくる。 「迷惑はかけないから、今噛んでも番にはならない。……大丈夫だから、お願いだよ」 「……俺に噛んでほしいって、そう思ったってこと?」 「んっ……」 「すげぇ、嬉しい」 鎖骨から首筋を舐めあげられ、力の奪われたその体を司がくるりとひっくり返した。一度抜かれたペニスを今度は後ろから押し込まれる。 「あッ」 後ろから抱かれるのはさっきまでとはまた違って、より深いところで繋がれているように思う。司でいっぱいいっぱいになり何も考えらない。 「綺麗なうなじ」 「ふぅっ、」 「いただきます」 歯の先がゆっくりと当てられたかと思うと、いきなり痛みが襲ってきた。見えなくても分かる。喜びを噛みしめたくなる程の濃い噛み痕が残されているのだろう。でもそれも、しばらくしたら消えてしまう。一時的に彼のものにしてもらえたその印を見ることもできないままに。俺は手を伸ばして指先でそこに触れた。 「ははっ、すごい噛み痕」 「お前が噛めって言ったんだろう?」 「うん、噛んでほしかった……。嬉しい。ありがとうな」 何を言っているのだと、気持ち悪いと思われるかもしれないと、そう考えているだけの余裕がなかった。素直になられずにはいられなかった。自分の気持ちを偽っていたらこの瞬間さえも嘘になってしまいそうで。 「なぁ真人。俺に噛んでって頼んだことに深い意味はねぇの?」 「え?」 「発情期でもない、今は何の理由も付いていないこの触れ合いに、俺たちの関係に、特別な名前が欲しくなったりしねぇ? 俺は後悔しなかったし、今日限りで終わらせたくもねぇ。今付けた意味もなく消えていくだけの噛み痕を残すなんてこと、もう二度としたくねぇ」 背中越しに聞いていたその言葉に起きあがって振り返れば、唇を奪われた。最初のキスとは違ってとびきり優しく合わせられたその唇は、このまま終わらせたくはないとその気持ちを一層強くした。 「意味のある噛み痕を残せば、一生繋がることになるんだ。番になって後悔しても遅いんだよ」 「だから後悔しねぇって。今もこれからも。お前に触れていると安心する。ずっとこうしたかったような気にさえなってくる。俺たちきっと、そういう運命なんじゃあねぇの?」 「司が運命とか言うんだ?」 「意外だろ? 俺だってびっくりだよ。お前を手に入れられるのならそんな恥ずかしいことだって言えるんだぜ?」 いつものように余裕の笑みを浮かべる司に、色々と悩むのはバカらしくなった。喧嘩ばかりしていたのも、司が勝手なのも、あの日体操服を勝手に借りていかれたのも、匂いに発情したのも、全部運命だと信じてみたくなった。 「後悔してもしらないから」 「そういうお前は? しねぇって言えるか?」 「……噛んでほしいって言うくらいにはな」 「ははっ、」 次の発情期はいつ? と、笑った司に、ばーかとだけ返して抱きついた。 END

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