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重なる想い(3)

 一瞬だけ驚いた顔をした彰史さんは、黙ったまま僕の傍に近付いて来て、そっと僕の頬に右手を添える。  僕は、ゆっくりと瞼を閉じた。  優しく重ねられた唇。    ◆◇◆◇◆  僕にキスしてくれたあと、家に戻るまで彰史さんは一言も口を聞かなかった。 (嫌われたのかな? 軽蔑しないって言ってくれたけど、やっぱり……気持ち悪いって思われた?)  不安な気持ちでいっぱいな僕を、彰史さんは寝室まで連れて来るといきなり抱き締めた。 「え……?」  訳が解らず戸惑う僕の耳に届いたのは、小さく呟かれた彰史さんの声。 「もう我慢出来そうにない」 「彰史さん?」 「水月が悪い。俺を煽ったりするから。責任取ってくれ」 「あの、彰史さん。どういう……ッ」  責任を取れとはどういう意味なのかと訊こうとしたが、彰史さんの唇がそれを止める。  先程と違う激しい口付け。 「んっ……、ふ、ぁ……」  角度を変え何度も重ねられる唇。  彰史さんの舌が僕の口腔に入ってきて、上顎や下顎、頬の内側を丁寧に舐めていく。 「……ん……ぅ……」  どうして? 彰史さんはどうしてこんなキスを僕にするの?  公園でしたキスは触れるだけの軽いものだだったのに。それで僕は充分だったのに。  涙が溢れた。  彼からのキスが嫌な訳じゃない。ただ、悲しくて。  僕が泣いていることに気付いて、彰史さんの口付けが止む。 「……水月……」 「……どうして? ……彰史さん。僕は、貴方が……好きです。きっと……愛しているの、だと……思います……」  言わないつもりだった気持ちを、泣きながら告げる。 「だから……公園で……キスして、くれた時……嬉しかった……。でも、今のキスは……悲しい。今のキスは……恋人にする……キス、です。僕にするキスじゃ……ない」  泣きじゃくる僕の涙を拭うかのような口付けが頬に落ちる。 「……悪い。俺、順番間違えた」 「……彰史さん……」 「水月、愛してる。俺の恋人になって欲しい」 「……」  思ってもいなかった彰史さんからの告白。 「……」 「返事は……っと、さっきの言葉が聞き間違いじゃないならOKでいいんだな?」 「はい……!」  僕は大きく頷いた。    ◆◇◆◇◆  ベッドに横たえられ、僕は彰史さんによって生まれたままの姿になる。 「水月……」  名を呼ぶ声にすら感じてしまい、僕の雄の証がぴくんと揺れる。  それを見て彰史さんがくすりと笑った。 「わ、笑わないでください……」 「ごめん。でも可愛いな、水月は」  僕一人で興奮しているみたいで、恥ずかしい……!  思わず両手で顔と男根を覆い隠す。 「隠さないで全部見せてくれ」 「嫌です……。彰史さんは服を着たまま、僕ばかりなんてずるい」 「解った。俺も脱ぐから」  そう言って一旦ベッドから出て、彰史さんは素早く服を脱ぎ裸体を晒した。 「これでいいだろ?」  抱き締められた時の感触で何となく解っていたけど。  想像していた以上に逞しく無駄な贅肉のない躰にドキッとなる。 「さ、俺も見せたんだから、水月も……」  ギシリとベッドのスプリングが軋んだ。 「……あまり……見ないでください。僕、汚れてるから……」  幾度も白龍に抱かれ汚れきったこの躰を、大好きな人に出来れば見て欲しくはなかった。  でも、それ以上に彰史さんと一つになりたくて……。  僕はゆっくりと両手を退ける。 「水月は汚れてなんかない」 「彰史さん」 「すごく綺麗だ」  彰史さんはぽんぽん……と、優しく頭を撫でて、啄むようなキスをくれた。    ◆◇◆◇◆ 「あっ……や……ぁんッ」  唇から始まった彰史さんの口付けは、頬、首筋と下りていき、胸へと辿り着く。

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