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一
あっという間に半月が経ったある日。
夜彦の緑のニットにオレンジ色のパンツをはじめ、いつもの服装の4人で古い町家の前に立つ。
木の看板には墨の字で『一』とだけ。
今の僕ならすらりと読めるよ……にのまえでしょ?
ガラガラと引き戸を開けて見回すと着物から洋服まで色々と並んでいた。
でも、店員さんが見当たらない。
「すいませ……うぷっ!」
大声で叫ぼうとしたら口を押さえられる。
上を見ると、ようちゃんがイーの口に人差し指を当てていた。
そして、小上がりになっている畳の上にあるカゴを指さす。
何故か笑いが止まらない夜彦とようちゃんがそこに近づいていき、カゴの上の方で空気を撫で始めた。
「真昼は行かなくていいの?」
隣を見れば目線の位置が同じ真昼が真顔で2人を見ていた。
「別に……ぼくぅ、犬派やし」
フッと鼻を鳴らす真昼は僕を見て舌舐めずりをする。
「でも、一番はやっぱりゆうくんやから」
僕は純粋な瞳に吸い込まれそうになった。
「にゃっ、またたびにゃ!」
「またたびにゃ……うにゃ!」
白い猫はようちゃんにデコピンをされ、灰色の猫は夜彦に頬ずりされていた。
「仕事をしろ、七夢 」
「なっ、お昼寝タイムだったんにゃ!」
白い猫は瞬時に白髪の黄色い着物を着た男性になった。
「むっちゃん、かわひひ〜」
「汚いにょはやめるにゃ!」
灰色の猫も灰色の髪の藍色の着物を着た男性に早変わりした。
獣人なんて、初めて見た。
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