「んっ、ん……」 　先輩の舌が縦横無尽に動き回るからまるで追いつけない。 　漫画でたくさん見てきたし、想像ではキスくらい、軽くできると思っていたのに甘く見てた。 　ねっとりとしたキス。先輩は何度も顔の角度を変えて、ぼくの口腔を犯す。 　座っているのに浮いてるような感覚。足元がふわふわとして気持ちよくて、先輩の腕にしがみつく。 「ふっ……ん、んー……」 　気持ちいい？　それってヤバインジャナイノ？ 　頭が馬鹿になっちゃったみたいに、なんにも考えられない。 　しばらくしたら先輩の口が離れていき、どちらのものかわからない唾液が糸を引いた。 「ごめん、なんかしつこかったかも」 　先輩はぼくの口元を親指で拭う。 　 「気持ち良くて、つい。けどやっぱり、お前とだったら付き合えそう」 　顔を火照らせながらも真っ直ぐ射抜くような目でぼくを見る先輩に、心が持っていかれた気がした。 　ぐるぐると世界が回る。 　ぼくはもう気付いていた。 　体の奥がジクジクと燻っていること。 　制服のズボンの中はいま、大変な状況になっていること。 「お前はどうだった？」 「な、な、なにがですか」 「だから、キス。気持ち良くなかったのか」 　不快感を与えようと思って舌をめちゃくちゃに絡ませてやろうと思ってたのに、想像の半分の動きも出来ずに翻弄され、あげくのはてには喘いじゃってたし……。 　キスなんてするんじゃなかった。 　もっと、もっとしてみたい。ぼくは頭の中でこればっかり繰り返していた。 「ま、まぁ……悪くは、なかったですね」 　見栄を張ってそんなことを言うと、先輩は「嘘つけ」と言い、ぼくの太ももに手を置いた。 　敏感になっているぼくの体は面白いぐらいに飛び跳ねる。 「ひゃっ……」 「なんか、反応してない？　そこ」 　先輩は手は動かさずに、視線だけをぼくの足の間に送った。 　伺うように顔を覗き込まれて、何か言い訳しなくてはと必死に頭を使おうとするけど、何も思い付かない。 　すす、と怪しく足の内側に滑らされ、ぎゅっと唇を噛む。 　まずい。このままじゃぼく、この雰囲気に流されて先輩に言っちゃいけないことを言ってしまいそうになるよー！ 「試してみない？　この先」 「えっ！　何をですか?!」 　本当に判らない。もしかして男同士でエッチができるのかどうかを試したいの？ 　先輩も顔がほんのり赤いけど、ぼくだって負けてないと思う。きっと昼間の歩太先輩よりも顔が赤くなってる自信がある。 　……あぁ、そうだよ、こんなの間違ってる。 　だってぼくの好きな人は、歩太先輩だ。なのになんでこんな状況になってるの？ 　どこからどうやり直せばいいのか迷っていると、先輩はぼくを安心させる為か、一層穏やかな声で言う。 　 「いきなり変なことはしないから安心しろよ。お前が苦しそうにしてるから、手伝ってあげようかと」 「だから、手伝うって何を?!」 「……だから、抜いてやろうかって。俺も試してみたいから、もしお前が嫌じゃなかったら」