38 / 111

第38話 バスケとぼくと怪しい視線

 聖先輩は涙目のぼくの肩を何度か叩いた。 「今から、競技を変更してもらうっていうのはどうだ?」 「先輩! お願いだから諦めないで!」 「いや、だってお前、今の出来じゃあ……」  くっくっ、と今にも吹き出しそうな笑いを堪えるのに必死な聖先輩を見て、頭に血が上る。 「あーーもう分かりましたよっ! じゃあぼく、歩太先輩に教えてもらおっかなーー!」  ぴく、と先輩の片眉が反応して、すぐに険しい顔になる。そしてぼくからボールを奪った。 「あと二週間以上もあるんだ。ドリブルしてパスできるくらいには上達させてやる」  先輩のハートに火がついたようで、ぼくにまずはドリブルの仕方を丁寧に教えてくれた。そしてひたすらやるようにと指示を出される。  何度も自分のスニーカーのつま先に当たり、すぐにどこか行ってしまうボールを取りに行き、掌と地面を行き来させる。  もう腕の力が限界になった時、ようやくその日の練習は終了となった。 「お疲れ様ー。生徒会室から見えてたよ。小峰、よく頑張ってたな」  すっかり風邪も治った歩太先輩がぼくたちの元へやってきてくれた。  そうだ、このグラウンドの隅っこは生徒会室の窓からもよく見える。仕事しながら歩太先輩がそこから見てくれてるんだったら俄然やる気が沸いてきた。 「ありがとうございます! ぼく、絶対に上達して本番ではシュート決めてみせます!」 「えっ」  聖先輩の動揺した声にムッとする。  無理なんかじゃない! 絶対に成功させて見せるぞ! そして歩太先輩にぼくの活躍している姿を見せて好きになってもらって……あぁ、それまでにはどうにかして聖先輩と別れなくては。  ぼくを真ん中にして、三人で帰ることになった。  校舎の中からぼくらをじっと見つめる複数の視線には気付かずに……。

ともだちにシェアしよう!