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〈第3章〉ぼくに降り注ぐのはドキドキとモヤモヤと。

 自宅に到着した時、すでに夜七時半を回っていた。自責の念にかられながら帰宅したので、かなりフラフラだ。  玄関のドアを開けて靴を脱ごうと三和土を見ると、いつもは無いはずのヒールの赤いパンプスが揃えて置いてあるのに気付いて、ぼくはリビングに直行した。 「(きさき)ねーちゃん、帰ってきたの?」  テレビを見ながら談笑していた爺ちゃん婆ちゃん、母、姉が一斉にこちらを向く。父はまだ仕事みたいだ。 「あぁ雫、おかえりー。うん、お母さんのご飯が恋しくなって」  姉の妃はぼくににっこりと微笑む。  母はぼくの分のご飯を茶碗によそってテーブルに出しながら怪訝そうにした。 「雫、こんな時間までどこ遊び回ってたのよ? 来月、中間考査もあるんでしょう」 「そうそう。だから友達の家で勉強会してたんだ」  ほんとかよ、と疑いの目を向ける母を横目に、ぼくは姉ちゃんに話しかけた。 「大学と一人暮らしはどう? もう慣れた?」 「なんとかね。一応友達も出来たし、サークルも入ってバイトも始めたし、毎日忙しいけど結構充実してる」  姉ちゃんは垢抜けた。  さっき久しぶりに目にした瞬間すぐにわかった。だって編み込みして凝ったかわいい髪型しているし、家では常に学校のジャージだったくせに、今はふわっとしたスカートなんか履いちゃって。  姉ちゃんはぼくが食べ終わったタイミングを見計らって、「私の部屋に来て」と言ったので、二人で姉ちゃんの部屋に入った。 「どう? 私変わったと思わない?」  姉ちゃんはその場でくるっと一周して見せる。 「うん。すごく変わった。ねーちゃん、もしかして」 「ふふ、そう。ついに見つけたのよ、運命の人」  得意気に言う姉ちゃんは、ここぞとばかりに運命の相手だという人の話をし始めた。  サークルで出来た仲良しグループの一人で、今度ついに二人きりで遊びに出かけるらしい。 「凄いねねーちゃん! 有言実行」 「そういう雫は? 運命の相手は見つかったの?」 「……」 「あっ、なんだか意味深な顔! 何よ何よ、勿体ぶってないで早く教えなさいよー」  ずいずいと顔を近づけてくる姉ちゃんの顔が見れずに、ぼくはぼんやりと遠い目をする。  なんて説明をすればいいのやら……。

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