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第46話* 先輩が攻めてきます5
はぁはぁと全力疾走した後みたいに荒く呼吸をしながらうっすらと目を開けると、先輩の手に白濁の液体がついているのが見えた。
あぁ、先輩の手の中に出してしまった……と顔を持ち上げて先輩を見たぼくは驚愕した。
先輩の蜂蜜色の髪や、上気した頬、シャツの所々にも精液が飛んでいた。
先輩は前みたく、ギロリとこちらを睨む。
「ひっ」
「だからイくんだったらイくって言えよな。こうなるから」
「い、言いましたよ! もうって」
「その時点ですでに遅いんだよ。あと三秒くらい早く言え」
先輩はティッシュの箱を手繰り寄せ、ぼくのと自分のペニスを綺麗に拭き取った。
「シャワー浴びてくる。お前は?」
「あ、あとで借りてもいいですか?」
分かった、と言い、先輩は部屋を出ていった。
ぼくは、いそいそと下着やシャツを身につけていく。
シャワーの音がどこからともなく聞こえてきて、いまの出来事が夢じゃない事を悟った。
(やっちゃった。やっちゃったやっちゃったやっちゃった……)
どうしてまた、こうなってからじゃないと反省しないんだろう。バカなのかぼくは?
さっきぼくは兜合わせをしている最中、先輩に「怖い」と言った。
もちろん気持ち良すぎてって意味だけど、頭の隅では、先輩との距離がどんどん近くなって怖いともぼんやり思っていた。
このままだとぼく、聖先輩のことを好きに……
なったら、何か問題ある?
歩太先輩は好きだけど、告白をした訳ではないから、相手に好きな気持ちはバレていない。聖先輩はぼくと両想いなのを疑っていない。
だったらこのまま、聖先輩を好きになれたのなら全て解決……?
ブンブンと首を横に振る。
そんな裏切り出来ない。
ぼくは優しくて頼りがいのあって親切で笑顔が耐えないアイドルオタクの歩太先輩を好きになったんだ。
こんなんじゃダメだ、と頭をポカポカ叩いている姿を聖先輩に見られて、鼻で笑われた。
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