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第87話 大変まずい状況です1

「小峰ー、ダメじゃん。俺の友達になんてことしてくれてんだよ」  カクライ先輩は、ぼくに散々ペコペコと頭を下げながらストリップショーを繰り広げていたその人の肩を抱き寄せた。その人はカクライ先輩の胸の中で、ゲスな笑みを浮かべている。  あまりの豹変ぶりに驚きを突き抜けて声も出ない。  ぼくはワナワナと手を震わせた。 「ちょ、なっ、だっ……その人が……っ、勝手にっ……」  あぁ、混乱のあまりに唇が動かないよ!  カクライ先輩は、スマホを見ながらため息を吐いた。 「これ、小峰が無理やり脱がせて触ってるようにしか見えねぇなぁ。これがグループメールに送信されたら、あっという間に学園中のみんなに知れ渡って、この学園にいられなくなるよなぁ」  先輩はぼくにスマホを突きつけてくる。    股間を触ってくるぼくの手を、必死で引きはがそうと嫌がっている一人の男。  真実を知らない人の目には、そんな風に映るだろう。  スマホを奪おうと手を伸ばしたが、カクライ先輩はぼくの届かないところまで手を上げてしまう。 「だっ、騙したんですかっ⁈ ぼくをはめようと、この人と打ち合わせしてっ」 「怪我がひどくなくて良かったな。調子づいてるから、ちょっとからかってやるつもりだったんだよ。そしたらお前、気失って、聖先輩にめちゃくちゃ名前呼ばれてるしよぉ」 「は、はい? じゃあやっぱり、ぼくを怪我させたのって意図的に?」  すっかり衣服の乱れもなくなったその人は、カクライ先輩にピトッと顔を付けながら言った。 「うん。ごめんね。俺、こいつの友達だからさ」  許せん!! ぼくは色々と振り回されたってことか!!  しかし、カクライ先輩たちがじりじりとぼくの方に近づいてくるのを見て、そんなことに気を取られている場合ではないと気付く。  一歩下がれば、あっちは一歩近づいてくる。  背中にダンボール箱の出っ張りを感じて、ぼくはとうとう追い詰められてしまったことを悟った。  カクライ先輩はふと、スマホを隣にいた男に渡した。  その男は、ぼくの方にスマホを向けてくる。どうやら動画を撮っているみたいだ。  嫌な予感しかしない。 「あの! こんなことしても何の解決にもなりませんよ! 一度冷静に話し合いましょう!」 「解決? するんだよねこれが。こうすることで、俺の気分がちょっと上向くし」 「あっ」  左手首を乱暴に掴まれると、じわっと痛みが走る。  その怯んだ隙に、床に仰向けに倒されてしまった。  カクライ先輩はぼくの両足の上に座り、体重をかけてくる。  逃げようにもめちゃくちゃ重いし、全然動かせない。  ついでに両手も、頭の上で誰かの手で固定されてしまった。

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