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1-1 魔法少女に俺はなるっ!

「はっ、はっ、ひっ…」 (やばいやばいやばい、終電出る……っ!) 只今、絶賛全力疾走中の、俺木谷創(こたにそう)は社畜である。 改札を駆け抜け、駅員さんの注意を無視して駅構内を猛ダッシュ。 あと2メートル… 1メートル…… 『○✕駅行、発車します』 「あー、待って待って待って!!」 プシューーッ 「はっ、はっ、はっ………」 なんとか、ホームに停車していた終電に乗り込めた。 (……っ、ぎ、ぎりぎりセーフ) ◇◆◇ (突然の回想) 就職氷河期。 何とか入社した会社は、絵に描いたようなブラック企業だった。 終電に乗るなんて、ほぼ毎日。泊まり込み(というか、気づけば夜が明けてる状態)は2週間に1回くらいの頻度である。いや、もっとだったかも…。 パワハラ・セクハラは表立って誰も言わないないだけで、普通に起きているし、残業はしても、給料は出ない。有給を取ろうものなら、上司からの嫌味を聞かなければならない上に、結局取らせてもらえない始末。 辞めれるならやめたいけど、正直、学歴そこそこの自分が、他の企業に中途で採用してもらえるかもわからない。 結果、ブラック企業に入社して早くも5年。 前述の通り、社畜としての日々を送っていた。 ◆◇◆ 次の日。 目が覚めると、ベットの上にいた。 もちろん自分の、である。 知らない他人の……とか、そういう素晴らしい展開は俺の人生では起きない。 起きるのはギャルゲーの主人公とかだけ。 壁掛けの時計は、ピッタリ12時を刺していた。 「っ、んーー」 大きな伸びをしてから、ベットをあとにする。 超恋しいが。 むしろ今すぐ飛んで帰りたいが。 (とはいえ、何も食べないわけにはいかない…。) いくら社畜ライフを送っていても、こちとら立派な成人男性だ。多少は腹が減る。 眠たい体をゆっくり覚醒させるように、俺はキッチンの棚を開けた。 (カップラーメンストックは━━) ら、カップラーメンが1つもなかった。 普段、カロリー●イトやらアリナ●ンやらで食事を済ませてるためか料理が一切できない俺は、日頃の食事をカップラーメンで済ませている。 その、重要な食料が1つもないのだ。 (え、前の休みのときネットでポチらなかったっけ……) 思い返してみるも、そもそも休みの記憶がない。 寝て過ごしたか、そもそもなかったか……。 (…と、ともかく。 流石に何も食べないのは無理だ。腹が何かを入れる気満々だし。 かくなる上は…) いそいそと服を着替え、身だしなみを軽く整える。 (財布とスマホ持った…鍵もある… よし!) 俺は、とてつもなく久々に、出勤ではなく、外出をすべく、扉を開けた。

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