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第21話

視覚的にもかなりやばい。 夾が腰を浮かせれば必然俺のが夾の中から抜けていく。 騎乗位だから結合部ははっきりと見えていて、俺のが出ては飲み込まれていく様子が生々しくてヤらしい。 綺麗についた筋肉が動くさまも、夾の腹部につきそうなくらいに反り勃つ半身も、目眩がするくらいエロくて―――我慢できるわけがない。 ずるり、と抜けていく。夾のタイミングで落ちてくる腰。それを俺のタイミングで遮った。 「……ッ」 ドン、と下から打ちつけると不意をつかれたせいか夾の中がぎゅっと締まる。 俺の反撃に目を細める夾にいままでにないくらいの衝動が湧きあがる。 手を伸ばして夾の腰を掴むと突き上げ始めた。でも夾がやられっぱなしになるわけもなくて、すぐにリズムを合わせ腰を揺らしだす。 部屋の中には肉同士がぶつかり合う音が響き渡る。 気持ちよくて、そして足りない。 身体を起こして夾の首に腕を回して引き寄せた。 視線が絡んだのはほんの一瞬。 俺が突っ込んでるのに、目はまるで野獣のようにギラギラしてて噛みつくように唇が触れてきて、俺も貪るように唇をあわせ、舌を絡め合わせる。 理性とか余裕とか思考とかどんどん消えてって、ただ本能だけでキスして腰を打ちつけて、夾の硬くなった半身を扱いて、全部味わっていく。 互いの咥内を舌が行き来して、宙で交わらせて。 俺の手の中で脈打つ夾のものをもっと先走りを溢れさせようと、射精を促そうと強弱をつけながら扱く。 キスの合間の荒い息遣いが色づいていて耳に入ってくると、ぞくぞくと背筋が震える。 「もっと、声聞かせてよ」 そう囁けば、色気を滲ませながらも男前さを失わない夾はにやりと口角を上げて俺のを締めつける。 「じゃあもっと追い立ててみせろよ」 どこまでも挑発してくれる夾に応えないわけがない。 夾の身体をベッドに沈め、うつ伏せにさせて今度は後から突き上げる。 しなやかな背中にキスしながら夾の半身を弄り、逞しい胸の頂も弄ってやれば掠れた吐息が悩ましげな響きを含みだして腰がどうしようもなく激しく動いた。 ガツガツと律動を繰り返す中で、 「ッ、ぁ」 呻く声がしたと思ったら俺の掌に熱いものが吐き出され、同時に夾の身体が痙攣する。 ひどく収縮する後孔に俺も一気に持っていかれて欲を吐きだした。 はぁはぁ、と荒い息がどちらのものかわからないくらいに混ざる。 余韻に浸るように夾に覆いかぶさったままでいれば「おい……」と肩越しに振り返った夾が不敵に笑う。 「まだ、終わりじゃねぇよな?」 俺は夾の背中を抱きしめながら、笑った。 まだ埋めたままの半身はまた硬度を持ち出す。 「まだ、これからだろ?」 言いながら、動きだす。 吐きだした白濁とローションの交る水音と、ベッドの軋む音。 肌がぶつかり合う音と、唾液の混ざり合う音と、獣のような息遣いと。 しばらくの間、それらが止むことはなかった。 *** 「疲れた!」 狭いベッドの上で大の字になって大きなため息を吐きだした。 もちろんスッキリ大満足だけど、疲れたのは疲れた。 奏くんともヤってはいた。でも本当の意味で男を抱いたって感じたのは今日。 「もっと体力つけろ」 ヤリはじめてどれくらい経ったのか。 三回戦まで立て続けにヤったって、かなり頑張ってない? そんな思いを込めて視線を向けると、ベッドの端に脚を下ろしていた夾は煙草に火をつけながら鼻で笑った。 情交のあとが色濃く残る部屋の中は暖房がよく効いていて、そこに煙草の匂いが混じりだす。 「毎日ヤってたら体力つくんじゃないかな」 夾の匂いが充満する空気。 シャンプーだとか香水だとかそんな可愛い匂いはまったくないけど落ちつく。 「毎朝ジョギングしろ」 紫煙が俺に向かって吐きだされる。 「朝、寒いなぁ」 真冬の早朝は辛い、と身も凍る朝の冷気を思い出して無理だなって確信。 ヘタレ、と笑う夾に、地味に筋トレがんばります、と返しながら綺麗な筋肉についた赤い痕を眺める。 首筋と、背中と。 手を伸ばして指先でそれに触れて、 「本当によかったの?」 と、なんとなく訊いてみた。 いやならヤらないだろうってのはわかってる。 「あ?」 ただ突っ込んでよかったのかなーと。 夾ってネコなんだろうかって考えるとそうでもないような気もするし。 俺が言いたいことを察したんだろう。煙草をくわえたまま夾はなんでもないことのように笑って言った。 「惚れてる相手になら突っ込まれても構わねぇよ」 本当にあっさりとした、さらりとした口調。 その言葉を咀嚼するのに少し呆けた俺を夾が睨む。 「お前は違うのか?」 「違わない!」 とっさに言えば、夾の口元が当然だろと緩んだ。 俺も、緩む。にやにやしちゃってヤバいくらい、緩む。 「夾、好き」 夾の身体に腕を巻きつけてうなじに唇を寄せた。 言ってしまえば、またヤバいくらいにやけてしまう。 「……おい」 「ってぇ!」 同時に疼きだした身体に、夾の肌へと手を滑らせ始めれば遠慮なしにつねられた。 「シャワー浴びるからやめろ」 「えー? いまの流れって四回戦の合図だろ?」 「違う。ヤんならシャワーと飯食ってからだ」 俺の腕をほどいて煙草を消して立ち上がる夾に俺も一緒に立ちあがる。 「じゃあ俺もシャワー浴びる」 「狭いから来るな」 「だって夾の中に出したやつも掻きださなきゃだろ? 平気平気」 舌打ちしながらしょうがねぇなと、 「大人しくしてろよ、智紀」 ため息をつく夾。 その言葉に―――俺が大人しくなるわけがない。 男二人で入れば窮屈すぎるバスルームで密着した身体が離れることはなかった。 こうして、高二の冬、俺と夾は付き合いだしたのだった。

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