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第6話
やがて決着がついた。
アモウは犬を飛び越えて背後に回り込みつつ、脊梁を砕かんばかりに槍を打ち下ろした。返す手で串刺しにして、槍を引き抜く。
巨軀がどうと倒れ、血しぶきが凛々しい面 を彩った。
「こいつは食いごたえがある。こいつと引き換えに、にいちゃんにオンナの真似をさせるなって長に掛け合う」
と、得意顔で鼻の下をこする。強敵を屠 りおおせたことより、一人前の男としてサギリを護り通すことができて満足だ、と言いたげに。
おこぼれにあずかる隙を狙って、カラスの群れが上空を旋回する。
サギリは黒い影を射散らすのももどかしく、アモウの元へと駆け寄った。そして息を吞む。たくましい腕に歯形がついている。
アモウが咬まれた、咬まれた。犬の唾液にはバイ菌がうようよしている。毒が全身に回ってアモウが死んでしまう、死んでしまう。
眩暈に襲われ、きっと顔をあげる。傷ついた腕を摑み寄せて、歯形に唇を押し当てた。
悪い血を吸いだして傷口を清める。ひとまず安心だと思えるまで、繰り返しそうした。
血と土埃でまだらになった顔が、いっそう紅潮する。アモウが荒々しく身をもぎ離した。
協力して犬を仕留めるどころか、おろおろするばかりだったおれに呆れている。サギリはそう思って、うなだれた。
「足手まといになって、すまない。おれは臆病者だ」
「にいちゃんが臆病者?」
アモウは噴き出し、小刀のような牙を槍でつついた。
「腰抜けぞろいのムラの男どもがこいつに出くわしてみろ、とっくに食われてる」
底抜けに明るい笑顔を向けられると、胸が張り裂けそうになる。サギリは、あらためてアモウの手を捧げ持った。頬ずりをしながら、切々と囁く。
「傷口が膿んだら命の保証はない。離ればなれになるのは嫌だ、おまえが死……ぬことがあれば、おれもすぐに後を追う」
「意地でも生まれ変わると誓った。俺は約束を違 えない、待っててくれなきゃ困る」
「生まれ変われっこない。戯言 をほざいてごまかすような、狡い男に育てた憶えはない」
「嘘つき呼ばわりするのか?」
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