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第2話
何か言いたいことがあるんならはっきり言え。
あんまり羽目を外すなとか、母さんが心配してたぞとか、そんな言葉は聞き飽きていて、二知翔(にちか)の心をちっとも動かさない。言葉よりも思わせぶりなため息に、いらいらする。言いたいことがあるならはっきり……いや、違った、その鬱陶しいため息をやめろ、と言うべきだった。鬱陶しい視線も。
黒のペンでぐしゃぐしゃ、とやるみたいに、消し去ってやれたらいいのに。
たった一年早く生まれただけなのに、どうして何もかも上から目線で言われなければならないんだ。
何かあるたび上から押さえつけられる。そんな毎日にうんざりしていた。それなのに何故か付き合う奴は年上ばかりだ、ということに最近気づいた。
自分の言うことを素直にきいてくれる子が理想。何も知らない子にイチからいろいろ教えてあげたい。オカズにするAVはそういったものが多かった。それなのに実際は、いいように喘がされていることの方が多い。
兄貴と仲いいんだな、と学校の友達に言われ、何のことかと思ったら、どうやらセフレといたところを見間違われたらしかった。ぎょっと肝が冷えた。セフレだということがバレなくてよかったがしかし、よりによって兄貴と間違われるなんて。
屈辱の経験をネタとして昇華してしまえとセフレに話したら、兄貴の写真を見せる流れになった。なぁ、全然似てないよな、で終わるはずだったのに、セフレの顔は強張っていた。それきり、連絡が取れなくなった。
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