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第1話

昔むかし、あるところにお爺さんAとお爺さんBが二人仲良く暮らしていました。 「ちょ、貴様、どこを触っているのだ。今すぐに俺様から離れろ」 「はっはっは。それは無理だなあ。お爺さんBの尻が『触って♡』と俺を呼ぶんだ」 「こ、こら待て。着物を脱がすな。あ、あ、あああぁ~♡」 と、毎晩仲良しをしていましたが、二人は子宝に恵まれませんでした。 ある日、お爺さんBが川に洗濯に行くと、川上から大きな桃がどんぶらこ♪と流れて来ました。 「こんな大きな桃は見た事がない。…仕方ないお爺さんAにも見せてやるか。…べ、別に二人で仲良く食べようなんて、思ってないぞ」 お爺さんBは誰に言うでもない独り言を赤面しながら喋り、苦労して大きな桃を家へと持って帰りました。 「これはこれは、随分と大きな桃だな。お爺さんBは俺の為にこんな大きな桃を持って帰って来てくれたのか」 「ち、違う!貴様の為ではない。俺が一人で食べる為だ!」 「そうか、そうか。それでは二人で仲良く食べるとしよう。はっはっは」 「人の話を聞かんか!この馬の骨ーっ」 お爺さんAが包丁で桃を切ると、なんと中から美しいオッドアイの男の子が泣きながら出てきました。 その男の子の涙は甘い桃の香りのするお酒『ももっしゅ』でした。 その涙を一舐めしてしまったお爺さんBはすっかり酔っぱらってしまいましたが、お爺さんAはザルだったので全く平気でした。 「にゃにお~。おれはよってにゃんか、ないお~っ」 「はいはい。お爺さんBはあとで構ってやるからな。少し待っているがいい。」 「だれが、きしゃまなんかに、かまってとたのんらかっ。うまのほねのぶんざいれ、にゃまいきらろ~っ」 きゃんきゃん鳴くお爺さんBを背に、お爺さんAは男の子の涙を分析しそのアルコール度数を抑える為の拘束具を作りました。 その拘束具のお陰で桃から生まれた男の子・桃太郎は、誰に迷惑をかける事もなくすくすくと大きくなりました。 ある日、村で鬼が出たとの話が上がりました。桃太郎は村の皆の為に鬼退治に行く事にしました。 「村の皆の為に俺に行かせて下さい!」 「貴様のようなヤツが行った所で何の役にもたたん。貴様は家で大人しくしていろっ」 「桃太郎、お爺さんBはお前の事をすごく心配している。お前の気持ちは分かるが無理はいけない」 「な、だ、誰が心配などしているか」 「…お爺さんB、分かったから。お爺さんA、俺は俺に出来る事をしたいんです!だからお願いします。俺に行かせて下さい」 「…うむ。桃ちゃんがそう言うだろうとは思っていたよ。分かった。行って来なさい。だがくれぐれも危ない事はしてはいけないよ」 「はい!お爺さんAありがとうございます」 「貴様ら、勝手に話を進めるなーっ」 翌日、桃太郎はお爺さん達の家を旅立つ事になりました。 「…貴様など、もう知らん。せいぜい鬼に食べられないようにするんだな」 「桃太郎、この俺、特製のきびだんごを持って行きなさい。お爺さんBはああ言っているが、このきびだんごの入った袋はお爺さんBが夜なべして作ったものなんだよ」 「な、夜なべなどしていない!たまたま時間があったから作っただけだ。お爺さんA余計な事を言うな!」 「ああ、これは言ってはいけない事だったか、はっはっは」 顔を真っ赤にして怒るお爺さんBと、そんなお爺さんBをからかって遊ぶお爺さんA。いつもと変わらない二人に感謝する桃太郎。 「今までありがとうございました。俺、行って来ます!」 こうして桃太郎は鬼退治に旅立ったのでありました。

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