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第1話 プロローグ

 コルーゼランダーク王国  ウィザハルディ暦 5038年〜  ザスラン大虐殺  ドゥラ・ワンジー・ルーン竜王の番が挙式中に、ティリオン・ソンバーディ・ザスリトによって略取される。同年、隣国ザスラン王国に侵攻開始。  竜王の最愛のオメガが、結婚式当日に隣国の王に(さら)われて、無理矢理番にされてしまってから、彼の人生の歯車が狂い始めた。  憤怒と後悔、悲しみの余り狂い始めた竜王は、己の魂に死霊竜王の呪いをかけてまで花嫁を探し、助け出そうとした。  しかし救出作戦は失敗し、花嫁が戻って来る事はなかった。彼の手元に残ったのは、初夜を迎えた後に贈る筈の番用の首輪だけだった。 竜王は首輪を握り締めながら嘆き苦しみ、呪詛の言葉を吐いた。  赦すものか。根絶やしにしてやる。隣国の王を。隣国の民を。彼の国に在る全ての者を。  彼は自国を守っていたほぼ全ての軍事力を駆使して隣国に一気に攻め込み、兵士のみならずあらゆる者を巻き込み、蹂躙し始めた。  その威力は凄まじく、竜王の軍勢に次々と殺されていった隣国の国民の血で国土は赤く染まった。そしてその穢れた地から、強力で悪辣な魔物達が次々と産まれていったのだ。  死闘の末、竜王は敵国の王を打ち倒した。しかし彼の身体は強烈な呪いと、殺した魔物達のおびただしい瘴気によって、酷く蝕まれていた。 瀕死の状態で、彼は部下達に言った。  これは余の我儘で始めた戦である。生き残ったお前達の穢れ全てを貰い受ける。自らにかけた復讐の呪いが解けるまで、ここに留まる事にしよう。  余がこの土地にいる限り、コルーゼランダークには魔物一匹近づかせないと約束する。  さぁ、余に構わずに魔境であるここから、早急に立ち去るが良い。  そう言い残すと、彼は竜の姿のまま永い眠りについたのだった。  未だ、敵国の王宮には結界が張られ、独り竜王は静かに眠り続けているという。 ーーーラドゥエラ著 (新訳)死霊竜王年代記 一部抜粋

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