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第15話 剤胤(R18)
「……」
小さな灯りがばちっと鳴り、暗い庵に響くと、胤の長い睫毛が動く。
「目が覚めたかな?」
胤は完全に目を覚ますと、がばりと身体を起こす。何度も子種を吹き出し、吹き出さなくなってからも、ぴくんと身体を震わせて果ててしまった。胤は先程までの痴態を思い出すと、身体全体が熱くなっていった。
「すまない、私ばかり気をやってしまって」
すまない、と胤に言われて、些か剤はこちらこそ生娘同然の者に随分と無理をさせたと反省したが、それは口にしないことにした。
「気にされるな、我も書でしか知らぬかった天使を汚しているような気分だった」
地獄に落ちたら、敵わぬからそなたを優しく抱きたい、と続けると、剤の腕は胤の身体を抱きしめる。それから、胤の目蓋やこめかみ、鼻、勿論、唇にも軽い口づけを幾度も幾度も重ねていく。
「んん……はぁ……んぅ……」
幼き頃、紛争で生みの父母を失い、父母と慕っていた師父らを失った。その双剣の切っ先のような天使はまたやっと幸福になれたのだ。
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