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第14話 剤胤(R18)
「さて、我はどちらでも良いが、希望はおありかな?」
剤は言うと、老廃物を洗浄し、腸壁を濡らす丸薬の方を指で遊ばせる。
そういえば、剤は胤に相手を、とは言ったが、胤に抱かれたいとも、胤を抱きたいとも言わなかった。
剤は経験豊富そうであるのに対して、胤は20歳を越えても、抜き身の双剣、それも切っ先のような性分だった故に、誰とも関係を持ったことがなかった。
「貴殿が手で弄んでいる方をいただこう」
胤は剤に告げると、剤は丸薬を胤の口の中へと入れる。
苦いような、何とも呼べない味が胤の口の中を通りすぎると、程なく腹の奥の方へ血液が溜まり燻るような感覚に襲われる。
「その反応だと我が入れるということかな? 今からなら遅くない。陽物など入れずとも気持ち良くなる方法はいくらでもある」
などと言うので、胤は剤の寝巻きをまるで剥ぐように荒々しく取り去った。
「この後に及んで、貴殿も人が悪い」
これから、どのようにすれば良い、と胤は剤に問う。
思えば、この世界に来る前から胤は憎き薬師である剤の虜になっていたのかも知れない。
がっちりとした大木の幹を思わせる師父とは違い、草花のように優しい作りをした男だが、目の前に座している男の方が抗いがたい程、美しく、胤としては抱かれたかった。
「では、この張り型を咥えて濡らして、我にくださらぬか?」
既に丸薬によって、吐く息も絶え絶えになった胤は股を開いて、剤を誘う。
すると、胤は張り型を口に含み、唾液が滴る張り型を震える指で剤へと渡した。
「あああっ……」
剤の指先はまるで匙を扱う時くらい慎重に、しかし、大胆に剤の腸内へ張り型を進めていく。
「うぅ、うぅ!」
「初めてだと辛いかも知れぬな。声を我慢せぬ方が楽よ」
と、剤は宥めてみたが、胤は嫌だ嫌だと意地を張るので、そろりと引き抜いてみる。
「ああっ、いや、嫌だ」
もっと激しく、と言わんばかりに、胤は頭を揺らす。乱れに乱れた髪が僅かな灯りできらりきらりと光り、剤の目には銀色の煙と相まってさらに煽情的に映った。
「異国の死後の国には天使という存在がいるという。そなたは我を迎えに来た天使かも知れぬな」
剤は胤をそのように表現をすると、胤は突然、不機嫌になる。
「き、貴殿は、死なぬ。自らの、死を、覆した。父上や母上、そして、私の死さえも」
何故、目の前の男はそこまで自虐的なのだろう。前の世界で幸福を受けとることができないのは失うことを恐れ、足が竦むせいだと言われたが、他でもない剤自身がそうなのではないかと胤は思う。
しかし、じくじくと快楽に落とされていき、剤は会話らしい会話ができなくなっていた。
しかも、
「それでも、いつかは火に焼かれ、土や水、風に還る日が来る」
と、悟り切っているところが、また剤には堪らなかった。
「もう快い頃合いかな?」
剤が張り型を抜くと、胤はまた髪を振り乱して、嬌声を押し殺した。余程、痛めつけている方が罵倒の1つもできるのに、優しければ優しいだけ剤は胤を責めることができなかった。
穿つように張り型を咥え込んでいた胤の内臓の奥の奥まで見えそうな、拡がった穴を見るやいなや、剤は自身の指を挿れた。
「……っ、ああぁ……」
剤の指は暖かく、まるで生き物か何かのように動き回る。だが、張り型と比べると、やはり細く、物足りなさを感じる。
「陽物を、貴殿の、を、私にっ」
すると、どれくらい耐えていたのだろう。
これでもか、と膨らみ、先走りでテラテラと濡れた剤の陽物は胤の直腸に突き立てられて、胤は一瞬にして意識を失った。
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