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第10話
ぼやける視界に光が差し込んだと思ったら、知らない男が立っていた。彼は無表情に透を見下ろしていて、無言を貫いていた時の雪政に似ているような気がして少しおびえて体を強張らせる。しかしすぐに彼は床に膝をつき、透の髪を優しく撫でた。
これは望んでいたものだ。
相手が兄ではないのに透はひどく安心した。
立ち上がって部屋を探し回り、カギを手に持って戻ってきた男は手を差し伸べて笑顔を浮かべる。
「一緒に行こう」
透はおずおずとその手を取り、強く握り締められて心の底から安堵した。
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