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「最近のマイブーム、だなあ?」
ソファーってものはどんなものにしろ、目に付いたらどうしても座りたくなる家具だと思う。
見た目からして柔らかそうなものも、しっかりした出来でも、座り心地は変わらず最高。そして腰を落とす。
いずれにしろ――それは眠たくなるようなものでもある。
現に今の俺がそうだ。
学校から帰ってきて、珍しく王司がまだ戻ってないなか制服から私服に着替えようとした俺だけど、今日の木下のテンションに煩わしさを覚えて平三の後ろにいた時間が多かった。
あいつのテンションの上がり方が異常なのを平三もよく知ってるみたいで俺のかわりに返事をしてくれたりと、いろいろ助かった。
そんな一日に9月も終わりそうな時期、苦しく暑かった季節が終わる。
すとんっ、と力なく座ったソファーはやはり心地良かった。
寮のものでも侮れない。
「……」
ここまできてなにが言いたいかというと、眠たくなったから寝た。
それだけだ。
それだけなんだが、如何せん同室者が同室者なだけ、溜め息も吐きたくないんだよ。
「さとしくーん……」
「……ん、」
王司の声が聞こえて眠りの世界から現実世界に戻ってこようとしている頭。
わかっている事なのに体が動かない。
しばらくして、また王司の声が聞こえたような気がしたが動こうとしない俺の体は王司を放置している。
ああ、そうだ。
わかってんだよ、頭では。
「んん、勃ちそ……」
「……っ」
その言葉に眠気がぶっ飛ぶ。襲ってきた腹のくすぐり。
その場に目をやればバカが俺のヘソ周りを舐めていて、手もまたイヤらしい手つきで太もも――内股――を撫でられている。
なにしてんだこいつ。
「おい、雅也」
「んぁ、しゃとひくん、おはぉ」
おはお、じゃねぇよ。
舐めながら喋ってんじゃねーよ!
王司の格好からしてまだ制服のこいつは恐らく寝ている俺を見て、どこかでスイッチが入ったんだろうよ。
起こすつもりで近寄ってきたのかもしれないし、最初から目当てで近寄ってきたのかもしれない。
王司の考える事は正直まだ理解してない俺。
というか、理解する気もおきないけどな。
「な、んかねっ、智志くんがお腹出してたから、つい」
「つい、で舐めんなアホ。退け」
この先、王司の行動を把握はしている。
上体を起こして王司の肩に手を置き、押してみるがなかなか動かず、それどころかベルトの金具部分を鳴らしながら外してきた。
行動を把握してたって事態が遅ければ俺も止められない現実。
王司を止めさせるには、俺自身もなにかエサがないと無理なんだよ。
ゲームとか、菓子とか、その辺で。
タイミング良く平三から連絡こねぇかなぁ……このままだと、またこのソファーでヤるはめになる。
それってどうよ?
「雅也、お前ここじゃなくてもっと他に場所とか……」
「うん、うん、ちょっとだけ」
ソファー的な問題であり、そろそろ限界だろ。
いくら掃除しても取りきれない“なにか”があるんだからな?
ソファーも可哀想だろうが。――おい、聞け。
「てめぇのちょっとは“ちょっと”じゃねぇだろ……」
「はぁ、さとしくん……ん、かわいいっ」
ベルトを外そうと王司の手が塞がってるせいか、まだ完全には外されていなくて、それにどう思ったのかシャツを捲ってなかに頭を突っ込んできた。
「だから……ここじゃなくてっ、部屋っつってんだよ……!」
いきなりしゃぶられる乳首に思わず王司を叩いてしまい、あぁもうこれダメだ、と諦めが出てくる。
背もたれに寄りかかって結局ここですることになった――と、思う――ソファーに申し訳ない。
また王司を使った渡り橋で会長様から寮長に検討してもらっては新しく変えてもらうか……新しいと最初は硬さがあってゴツゴツしてんだもんなぁ。
座り慣れたからこそある心地良さ。
こいつはそれをわかっているのか?
「智志くん、さとしくん、ね。舐めてイイ?ん、」
シャツの中に頭を入れてる王司は俺の乳首に話しかけるように語っている。少し顔を上げれば俺と目が合うのに。
その乳首に喋りかけながら“舐めてイイ?”と聞いた場所は――もちろん俺のチンコだ。
モノを撫でているし、言い方も流れもそれしかない。
昂ってきてる俺も俺で、ソファーの心配をしながら一つ大きな息を吐く。
「雅也、」
「さとし、くんっココ、勃ってきてる……っ」
そうかそうか、俺のそこは勃ってきてるか。
乳首が勃つって男としてどうなんだろう、とは思うが……こいつしかいねぇしなァ?
一個一個と、王司にバレるかバレないかでシャツのボタンを外す。
「雅也、聞けよ」
「智志くん、好き」
外すと同時に窮屈さもなくなってるはずだが、王司は興奮し過ぎて気付いてないらしい。
バカもアホも、カスもなんでもありなのかもしれない。
「まさや、」
「ぁッ、さとしく、ん……」
「お前なんなの?年中盛り時期?」
やっと外し終えたボタンに王司の髪を掴んで無理矢理、顔を上げさせる。
こいつもこいつで舐めてしゃぶっていたのを急に止められたからか、少し怯えた目で俺をうつしていた。
いやぁ、このソファーも短かった気がするなぁ。
「智志くん、やだ……」
「なにが」
「続け、たいんだけど……」
勘違いをする王司に一言。
「少しは耐えろ、ドM野郎」
「んぁッ、」
出来るだけの力を出して掴んでいた髪を引っ張り、横腹へ膝を入れて蹴る。
ここで王司の喘ぎが聞こえたが無視だ。それに気を抜かしてる体を押し倒して王司に跨る俺を、期待した目に変えて潤ませる王司。
体勢逆転。
癪なところもあるが、しょうがない。
相手はあの王司 雅也なんだ。
「さとしくん、あのっおれ――「しゃぶりたいんだろ?」
跨りから膝立ち。
外しきれてないベルトを外して、王司の肩を掴みながらソファーの上に立つ。
安定しない足元に不安を覚えつつ、恥もなく出てきた俺のモノに王司の息飲みが大きく聞こえて笑いそうになった。
飽きもせずよくずっと咥えたがるよなー。不思議だ。
このソファーも取り替えることが決定してて、とりあえず綺麗になった状態で最終的には誰かの部屋に渡るだろう。……出来れば、汚したくない。
手遅れでもな?
「お前、ちゃんと飲めよ……?」
「ん、うんっ、飲む!」
元気よく返事する王司を、ここだけ見たらまるでジュースを欲しているようにしか見えなくてしょうがなくなる。――って思ってしまう俺がこいつを甘やかしているだけなのか……。
わからない……変わらずのこいつと、変わってしまった俺?
どうしよう……いや、まあ、いいや。
今度、バカ正直には話さなくても平三と木下に相談してみよう。こんなの、俺一人では抱えられないぞ。
「智志くん、集中してくれないかい?」
「……はっ?」
――誰のせいで頭を抱えてると思ってんだ?
なんとなくのイラつきでビンタをして無理矢理、咥えさせたのはその直後の話だ。
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