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第1話 運命との出会い

この世界には男女の性別だけでなく、α、β、Ω の性がある。 人権の平等が謳われ、昔ほど差別はなくなったものの、やはり体格の差や、発情周期による Ω の社会的ハンデによって、α が上位に、Ω は下位に見られがちである。 しかし、Ω は α を引き付ける。 Ω の発情期のフェロモンは α を魅了し、強く匂い立つ。α が Ω の首筋を噛み、お互いを(つがい)とするまで… 一般的には日々の暮らしの中で恋愛し、番い、家族となるが、αとΩには本当は自分だけの〈運命の番〉が存在する。 この世界の何処かにいる 、〈運命の番〉 しかしそれに巡り会える確率など滅多にない。大抵の人は出会わないまま他の人と恋をして、(つが)う。 だからこそ、〈運命の番〉 との偶然の出会いは現代のおとぎ話と囁かれ、番のいない α、Ω の憧れであった。 大学生の僕、日野 晶馬も、おとぎ話に憧れている1人だ。 痩せた体躯と地味めな顔立ちがあまりΩらしくなく、発情期(ヒート)も未だないので、現在は抑制剤も必要なく、性別の隔りなく学生生活を送っている。 しかし、Ωである以上、ヒートも来るし、子供も産まれる。その相手が、心も体も惹かれ合うという運命の番だったらどんなに幸せなことか! でもそんなことはありえないからおとぎ話なんだよね。 憧れを抱きつつも半ば諦め、学生生活を送っていたある日、学食で 「え?」 その人を見た途端、痺れが走り、目が釘付けになった。 相手もこちらをみて同じように固まったが、途端に眉間にシワを寄せ、吐き捨てるように呟いた。 「うわ、やべ。会っちまった」

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