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第13話 僕でいい?
呼んですぐ後悔した。いくら苦しくても、この汚い姿を見られたくない。
タオルケットを被り、部屋の隅のテーブルと壁の隙間で蹲った。熱くて苦しくて、涙と震えが止まらない。
どのくらい経ったのだろうか、バタバタと足音が近づいて、扉がバン!と勢いよく開かれた。
「日野くん!」
部屋をざっと見て惨状を確認し、隙間にいる僕を見つけて駆け寄ってくれた。
「せ、ん輩。ご、ごめんなさい。だいじょうぶ、僕だいじょうぶだから」
「どこが!出ておいで」
先輩が手を伸ばしたのを壁側に後ずさってよける。
「駄目!汚れる!ぼく汚い」
タオルケットでベタついた手とお腹を拭いた。
まだ汚い。首と胸を拭いた。まだ汚い、二の腕と腿を。まだ汚い。脇と手先。まだ汚い、まだきたない、まだキタナイ……
「……ぅま、晶馬!」
ハッ!
「あ…」
気づけば先輩が僕の両手首を掴んでいた。胸や腕が少しピリピリするので見ると、赤く、みみず腫れになっていた。知らないうちにタオルケットじゃなく手で掻いていたらしい。いつもの引っ掻き傷はこれだったんだ。
先輩は僕を包み込むように、上からギュッと強く抱きしめた。そして僕の手を取ると、僕の顔のすぐ前で指をペロペロと舐め始めた。僕はそれを熱が上がってぼーっとした頭で眺めていた。
「先輩、汚い、汚れる」
「汚くないよ」
指が終わると手の平、それが終わると手の甲。俯いた先輩の長いまつげや蠢く赤い舌に目が釘付けになった。
「まだ汚い?」
センパイガ ナメテ キレイニシタ テ
「ううん、キレイになった」
僕はその手にうっとりと頬ずりをした。不思議だ。汚いと感じない。
先輩は満足そうに笑った。
「さあ、出ておいで。全部綺麗にしてあげる。中も外も、頭のてっぺんからつま先まで。他は?何がしてほしい?」
先輩は僕を抱き抱えるようにベッドに誘った。そして頭のてっぺんと頬にキスをして涙の跡を舌でぬぐってくれた。それからさっきと反対の手を舐め始めた、
「痛い?苦しい?何をしてほしい?ほら、言ってごらん」
何を…
「熱い。出したい。でない。触ってもでない。苦しい。せんぱい、せんぱいぃ」
ふぇ。また涙が盛り上がってきた。
「いきたい。出したいよぅ、ううっ、ヒック。うぅ。」
「分かった。イきたいんだね。でも中に出されないとイけないでしょ。どうする?高村さん呼ぶ?」
「やだあ。高むらさんとやだ。こわい。やだ。やだぁ」
ふぇえ。えっ、えっ。ヒック。
本当はいつも怖かった。平気、平気って思ってきたけどもうしたくない。こわい。
いつの間にか呟いてたみたいで、先輩が そう。と小さく頷いてくれた。
「泣かないで、晶馬。じゃあどうする?僕が抱くかい?僕でいい?」
「せんぱいが?ぼくを?いいの?汚いよ、いいの?」
「汚くなんかない。でも僕は運命の番じゃないよ。君の体は受け付けないからこじ開けなきゃいけない。痛いよ。それでも僕がいいの?」
「痛くてもいい。せんぱいがいい。せんぱいじゃなきゃダメ。誰もダメ。せん輩じゃなきゃやだぁ」
「あぁ。可愛い。僕の晶馬。君は僕だけの晶馬?」
「うん。先ぱいだけのぼく。」
「じゃあ、高村さんやめて、僕の番になってくれる?首、噛んでもいい?大事にするから、お願い、噛ませて」
「うん。うん、うん。なる。せんぱいのつがいになる。かんでぇ。くび、かんで。」
「痛くても我慢出来る?」
「せんぱいがしてくれるならいたくてもぼくがまんできるよ。」
「痛くても途中で止めないよ。いい?」
「いい。せんぱいのになるならぼくいたくてもいい。つがいにして。せんぱい。ぼく、つがいになりたい。おねがい」
そう言ったら先輩はよく出来ました、って言って唇にちょんとキスをした。
ちょっとビックリして僕が初めてチュウしたって笑ったら、先輩も笑った。
「分かった。晶馬、君を私の番 にする。君の鎖を断ち切るよ」
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