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オレはたまにマーシャが怖い。いや、言い方を変えよう。マーシャ自身が怖いじゃなく、マーシャの雰囲気に飲み込まれそうな自分が怖い。 もちろん、この行為の時は彼の雰囲気や甘えに流されたりしてる。彼は太陽ーー陽の当たる場所で生きる人間だ。オレは暗闇にしか過ぎない。同じ城に身を置いていても、陽が少し当たるか当たらないかの路地裏のような場所でいた方がいい。 でも、彼が与えてくれる光はいつも温かく優しさを含んでいた。 「セーラは僕の太陽だよ」 「………えっ?」 聞こえていた?僕、口に出していた?マーシャはそんなことを言っている。どうやら自分は変なタイミングで起きてしまったらしい。思考がクリアになる前に屈託のない笑みを向けられる。睫毛は長くメイクをしていなくてもアーモンド形の目は大きくて濁りのないローズクォーツの瞳が開かれていた。 「僕が太陽で民を照らしてるんじゃない。セーラがちゃんと応援してくれて、オレの背中を押してくれる、笑顔で待っていてくれるから僕は太陽の王様でいられるんだ。ううん。違う」 マーシャの暖かい指がオレの手の甲に当たった。 「僕が月で、セーラが僕を照らす本当の太陽なんだよ。………だから」 コンコン。外部からの音に腹の上にいたマーシャは起き上がった。 「はい。セーラは寝てて。今から少しだけ会議に行ってくるよ。あと、これ。明日の抑制剤ね。忘れていたよ」 何一つ無駄のない身支度をし、巣から離れる。少しとは言っていたが、多分明日まで戻って来ないんだろう。 「……マーシャ」 掠れた声でなんとか彼の名前を呼ぶ。 「ん?なーー、んっう」 「行ってらっしゃいの、キス……。落ち着いて行ってこい」 顔を離すとセーラは鳩が豆鉄砲を食らったような、目を点にしていた。 「ほら、もう行かないと」 「う、うん……」 「行ってらっしゃい」 「はいっ、行ってきます。セーラ」 扉を開ける前に床に躓いた彼を見たけど、きっと大丈夫だろう。血の滲むような努力をしたセーラが他の輩に負けるなんてない。 (眠い……) そういえば、今日はまだ寝ていなかったことを思い出し、重い腰に毛布をかけて安心してもう一度眠った。

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