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序章 1

休み時間の終了する少し前。 高校二年になる本弭 紡(もとはず つむぐ)は、息を詰めて教室の自分の席に腰掛けたまま、じっと机を見つめ、前回の授業の時行われた英語の小テストの結果を待っていた。 他のクラスメートたちは愉快そうにふざけあっている――彼らのような普通の生徒には、教師が気まぐれに行う小テストの結果など取るに足らないものなのだ。 しかし、紡にとっては違う。 その小テストの結果は、運命を左右すると言ってもいいぐらい、今の紡には重要なことだった。 やがて教師が現れ、生徒たちは席についた。それから――教師は一人ずつ生徒たちの名前を呼び、テストを返し始めた。 「――本弭」 紡の名が呼ばれた。身を硬くしたまま立ち上がる。 「よし、完璧だったぞ。次も頑張れ」 教壇の前へ来た紡に、教師はテスト用紙を渡しながらにっこりしてそう言った。 紡は安堵し――ようやく肩の力が抜け――大きなため息をついた。 満点だった、良かった…… 嬉しかったが、それは勉強の成果が出たという普通の学生が味わう、満足感を伴う喜びではなかった。 ――これで罰を受けずに済む、という嬉しさなのだ。 たった十問のテストでも紡にミスは許されない。もししくじれば――霧原はその数だけ、罰として紡の肌に鞭を当てるのだから――

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