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終章
その後……瀬島が正式に二人の後見人になってくれた日の夜――兄弟は瀬島の住むマンションへ連れて行ってもらった。暫くここで我慢してくれや、狭くて悪いけどな、と瀬島は言った。そんなのどうでもいい。いくら狭くったってかまわない、おじさんといられるなら。と紡は感謝しながら考えた。
紡は寝るのはどこでも良かったのに、瀬島は兄弟に彼の寝室を使わせてくれた。瀬島のベッドには守を寝かせ、紡は床に敷いた布団に潜り込んだ。
暫く眠り、ふと目が覚めた――扉の隙間からわずかに明かりが漏れている。隣のリビングでまだ瀬島が起きているらしい。紡は起き上がって布団から出た――守はぐっすり眠っている。
リビングでは瀬島が水割りのグラスを片手に、テーブルでパソコンを開いていた。紡に気づく。
「あら?起きちゃったか?」
「はい、ちょっと……瀬島さん、お仕事ですか?」
「いやいや」
瀬島が見ていたのは賃貸情報だった。
「ここだとこれからずっと暮らすにゃちと狭いからな、どっか引っ越そうと思って。お前らの学校からも近い方がいいよな、それぞれ個室もやりたいし……」
ずっと暮らす……その言葉を聞いて紡は胸が詰まり、瀬島の首に腕を回して抱きしめた。
「お?おっとっと」
瀬島は優しく言い、紡の腕を片手で撫でた。
「こらこら。そんな事したら……おじさん、押し倒したくなっちゃうぞう?」
おどけた風に言った瀬島の顔を、紡は間近でじっと見つめた。
「おじさんにだったら俺……押し倒してもらいたいです……」
瀬島はふと真面目な表情になり、静かにグラスを食卓へ置いて紡に顔を寄せ、唇を重ねた――甘く……優しいキスだった。
それからそっと唇を離し
「これ以上行きたいのはやまやまだけど……守が隣で寝てるからな」
と囁いた。
「そうですね……残念」
紡が言うと苦笑された。
「たまんねえなあオイ……さ、もう布団入んな。冷えるといけねえ」
「はい」
紡は頷き、瀬島の首から腕を解くと、頬に小さく接吻し、おやすみなさいと囁いて部屋へ戻った。
瀬島は紡が閉めた寝室の扉を暫く眺めていたが、彼が口付けていった自分の頬を満足げな表情をして指先で撫で、再びグラスを取り上げると、PCの画面に目を戻した――
おしまい
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