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第2話 桃井秋晴について

 いつだってそうだ。筒賀幸治の恋人の桃井秋晴は、αであるのに隙が多くて、隣で見ている幸治はいつもはらはらとした気分にさせられる。  例えば、秋晴と幸春が共に歩いていると、それだけで中性的で美しい容姿をしている秋晴はそれこそ、α、β、Ω関係なしに周りの目を集めてしまう。しかも、問題であるのはその事実に秋晴が気がついていないということだろう。  秋晴と幸治が共に街を歩くと 「少し、本屋に寄ってくるから」  と、一言だけ残してふらりと幸治の傍からいなくなってしまうことも度々で。その度に幸治は秋晴を探し走り回るのだが、秋晴を見つけた時必ずと言っていいほど誰かが秋晴の傍に居るのだ。勿論、それを追い払うのは幸治の役目で、この時ばかりは幸治はΩらしくない自身の身体能力の高さに感謝するのだ。  しかし、それにしたって秋晴の無自覚さは性質が悪い。  この間も大学内を秋晴と幸治が共に歩いていると、幸治の容姿に誘われて近寄ってきた者がいた。その男はβで、幸治と秋晴が所属するゼミの一つ上の先輩だ。前々から、彼が秋晴を狙っていることを幸治は知っていた。  「ちょっとゼミの教授に資料頼まれちゃって。一人じゃ重いから、桃井手伝ってよ」  猫撫で声の男の声。普段、秋晴に“鈍い”だの言われている幸治にも、男の言葉の裏の下心が透けて見えるようだった。それなのに、秋晴は「わかりました。いいですよ」なんて綺麗な笑顔を浮かべてあっさりと二つ返事をするものだから、隣にいた幸治はぎょっとしたものだった。  勿論、秋晴の身が危ないと分かっているのに、男と二人きりになどさせられない。  結局、資料は幸治が半ば秋晴の手からひったくるようにして奪い、そのまま三人で(秋晴は手ぶらで、その殆どを幸治が持ったまま)運びこんだ。こうして、幸春は秋晴を無事に守りきることができたのである。

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