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Ⅰ 皇帝が生まれた宇宙③

「お怪我はございませんか。陛下」 硝煙がなびく。 銃弾は俺を擦り抜けて…… 背後で、ドサリと人形が倒れた。 今しがたまで生きていた人間だ。 弾が心臓を貫通している。 「義勇軍……否、賊軍の怨みを余程陛下は買っておられるらしい。賊軍は外の混乱に乗じて、艦内に侵入し白兵戦に持ち込む算段のようですね。あるいは、あなたの暗殺か」 心臓が警鐘を鳴らす。 運命の糸が違えば、俺の命が消えていた。 そうじゃない。 今、男の銃口が俺の心臓を捕らえている。 引き金を引けば、俺の命は撃ち抜かれる。 生命の危険にさらされているから、震えているんじゃない。 この拍動 この心臓の音 食い破りそうなほど左胸を穿つ鼓動は…… 震える。 構える銃口が。 指が、手が、腕が。 震えている。 心臓が震えている。 「俺は」 「あなたは私を殺せない」 「お前は」 「私はあなたの」 銃声が鳴った。 俺の背後で撃ち抜かれた兵士が倒れる。 「運命のα」 抱きしめられた。 互いに銃を握ったまま。 俺の体は憎い男の腕に囚われた。 心臓が奏でる。 なぜ? 俺達は出逢ってしまったんだ…… 運命が廻る。 悲鳴上げて。鼓動が叫ぶ。 運命は、俺の心臓にとり憑いた。 世界は残酷だ。 屑の世界は、なぜこんなにも残酷なんだ。 運命が交わった瞬間、選択肢は一つしかない。 選ぶ事すらできない。 運命のαとΩが、出逢った瞬間 二人は…… 俺達は愛するしかないのだ。 運命の(ツガイ)の宿命なのだから………… あなたを愛している。 (クラウス殿下) 今もあなたを愛しているのに……

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