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第18話
「水沢さん、大丈夫ですか。熱計って下さいね」
看護師さんがてきぱきと点滴を外して体温計を渡しながら俺の手首にそっと手を当て脈を測る。
「痛 ぇ……」
ゆっくり身体を起こすと大袈裟じゃないかと思うくらいの後頭部に巻かれた包帯の下の傷口がずきずきと痛んだ。
「4針縫っているからね。この後は診察受けてから帰れると思うけど、あんまり痛いようだったら先生にちゃんと伝えてね」
脈を測り終えた看護師さんが笑顔を俺に向けた。
4針が多いのか少ないのかはわからないけど、しばらくこの痛みは続くのか。
分厚いガーゼに膨らむ後頭部にそっと手を触れながら看護師さんを見ると佑真さんにこの後の診察の説明をしていた。
時折、微笑みながら受け答えをする佑真さんに20代後半に見える看護師さんの顔がほんのり赤く染まり、嬉しそうに見える。
測り終えた体温計を受け取り、少し熱があるので具合が悪くなったら教えて下さいねと告げるとベッドのカーテンを閉めて去って行く看護師さんの足音が遠ざかっていった。
「大丈夫か?」
そっと俺の額に触れる佑真さんの手の気持ちよさに目を閉じた。
「佑真さんはどうしてここに?」
見上げた佑真さんの目の下にうっすら隈ができている。ずっとそばにいてくれたのかと思うと申し訳ないと感じながらも嬉しかった。
「お前の友達から連絡をもらった」
少し熱いなと呟いて佑真さんの手が離れていく。ただそれだけの事が寂しく感じてしまう。
「そういえば永徳は?」
泣きながら何度も謝っていた永徳の姿を思い出し、まわりを見渡した。
「お前が眠ってから帰った。後で連絡しておけよ、大分心配していたからな」
運悪く倒れた先の柱の角に頭を強打して流血沙汰。救急車まで呼ぶほどの大事になり、永徳の両親にも迷惑をかけてしまった。
「佑真さんも忙しいのに迷惑かけてすいません」
「お前はどうして……」
笑顔を作る俺に佑真さんが大きく溜息をついた。
「佑真さん?」
「……いや、俺の事は気にしなくていい」
言葉を飲み込んだ佑真さんが気になりながら診察室へと向かった。
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