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第91話

「――翔、翔」 瞼を上げると俺の頬を優しく撫でながら佑真さんが心配そうな表情を浮かべていた。 「祐……真さん……」 掠れる声で微笑む俺を見た佑真さんは安心したように小さく息を吐いた。 「無理させてすまなかった」 遠慮がちな笑みを漏らす佑真さんに小さく首を振り、腕を回してぎゅっと抱きついた。 「ごめんなさい佑真さん……佑真さんはいつもそばにいてくれるのに、不安になって勝手なことばかり言って……」 「不安になるのは俺も同じだって言っただろう」 触れあう身体から伝わる佑真さんの静かな鼓動が俺を安心させてくれた。 「俺、やっと気づいたんです。佑真さんのそばにいる時が、佑真さんだけが俺に安心感をくれるんです」 俺に必要とされている事を感じさせてくれて、ずっと求めていたここにいてもいいんだという絶対的な安心感を与えてくれていた佑真さんに俺はやっと気づいたんだ。 「どんな事があっても俺は翔のそばにいる。愛しているんだ……翔」 「俺も……佑真さんを愛しています」 俺の言葉に幸せそうに微笑む佑真さんを見て俺が一番欲しかったものはこれなんだと心からそう思えた。 見つめ合い重なる唇の暖かさに幸せを感じ、抱き合ったまま眠りについた。  不安は消えないかもしれないけどもう迷ったりなんかしない。 愛なんて知らなかった俺に愛しいという気持ちを教えてくれた佑真さんに目が覚めたら伝えたい。 たくさんの嘘が溢れるこの世界で俺の居場所になってくれた佑真さんに……。 ありがとう、幸せです……と。 これからもふたりで同じ時間(とき)を重ね続けたい。 佑真さんのそばで、佑真さんの幸せそうな微笑みを見られるなら何度だって幸せですと笑えるから。                                                                     Fin

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