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「亜利馬っ、それは俺の肉だ! 勝手に食ってんじゃねえ!」 「焼肉は戦いなんですよ、潤歩さん。ボサッとしてたら背中を刺されます」 「こっからこっち全部俺の肉! 俺様の陣地に入ってくんな、お前ら!」 「もう、飯くらい落ち着いて食べなよ。子供じゃないんだしさぁ」 「大雅、何か追加で頼むか?」 「……白いご飯と、ネギ塩タンと、コーラ」 「了解。お前達は何かあるか」 「竜介、俺のビールも!」 「特上ロース!」 「俺もコーラお願いします!」  焼肉屋の個室で男五人。食べて飲んで騒ぐ様はそれこそ子供みたいで、そんな時間が俺にとっては心から楽しかったりする。俺が「亜利馬」でいる時間。衣装を脱いで台本通りの台詞を言うこともない、正真正銘の「亜利馬」でいられる時間。  そんな大切なひと時を、この四人と一緒に過ごせることが嬉しかった。 「八月の動画でさ、みんなで海行ったりできるといいね」 「獅琉さん、日焼けしちゃいませんか?」 「毎年のことだもん、平気だよ」 「俺はボード持ってこうっと。お前らガキ組は浮き輪だな」 「別にいいじゃないですか、浮き輪楽しいですよ」 「竜介に二人分、引っ張ってもらう」 「はっはっは、任せろ!」  こんな風にずっと楽しくやっていけたら。  思ったその時、着信を受けた獅琉のスマホがテーブルの上で振動した。 「もしもし。……はい、今五人います。――えっ? あ、本当ですか……はい。わ、分かりました」  通話を切った獅琉が神妙な面持ちで俺達四人の顔を見て、……ニヤリと笑った。 「俺達のライバルグループの結成が正式に決まったって。今後は動画でグループ対決とかあるかもしれないって」 「えっ?」 「マジか」  ブレイズのライバル。本気で挑んでくるとしたら、それはきっとメーカー側も相当に自信のあるモデルを揃えるつもりだ。 「面白いじゃねえか。誰が来ようと血祭りにあげてやる」 「へ、平和なゲーム対決ならいいですけど……。売上げとかを本気で争うとしたら、ちょっと怖いですね……」 「構わないさ。楽しければ何でもいいじゃないか!」 「……俺もどっちでもいい」 「よし、俺達も改めて気合入れてこう!」  獅琉が拳を前に突き出し、俺もそれに続いた。竜介が大雅の腕を取って同じように突き出し、最後に潤歩が嫌そうに拳を作った。 「えーと、こういう時の掛け声は……」 「ファイトー! みたいな感じですか?」 「よし。ブレイズ――……」 「長げぇよ」 「ファイ、トー、……?」 「ファイト~」  全く噛み合わないタイミングのぐだぐだ感と照れ臭さに、俺達は大笑いしながら焼肉争奪戦を再開させた。  見たことがないもの、やったことがないもの、感じたことのないもの。  まだまだ知らないことが多過ぎて、これから先の道、不安は決してゼロじゃない。時には挫折したり泣いたり、悔しい思いもするかもしれない。着地点も定まっていない俺だけど――いつか見えた目指す場所が遠くても険しくても、その道を五人で走れるならきっと何だって乗り越えられる。  あの日踏み出した一歩を、いつか誇れる日がくるように。  俺もブレイズも、前だけを見て進み続けるんだ。  終 *お読み頂きありがとうございました!  第2弾「もっと!COALESCE!」も投稿しています。  どうぞよろしくお願い致します。

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